洗剤、石けん、歯磨きなど生活用品大手のライオン(東京都墨田区)は、点呼時などに運行管理者がドライバーの体調を定量的に判断し、安全な運転業務を支援する「コンディションナビ」を開発した。リストバンド型の活動量計をドライバーが装着して睡眠の状況や疲労感を測定、パソコンやアプリで確認できる。

 

同社ビジネス開発センターで副主席部員を務める後藤博氏は、「睡眠の不具合による漫然運転をなくすため、コンディションを見える化し、運行管理者とドライバーが協力しあって安全運行を継続していく、そんなサービス」と切り出す。「従来の点呼でも体調は確認されているが、口頭で『大丈夫か』『大丈夫です』と言い合うことになり、周囲はもとよりドライバー自身も『本当の体調』を把握しきれていないことが課題だった」と分析。「運行管理者さんは、不安を抱えたまま送り出すことになっていたのでは」と寄り添う。

同サービスでは、ドライバーは腕時計型のデバイスを着用し、睡眠を時間や質などさまざまな角度からスコア化して評価。ドライバー自身もスマホアプリで確認できる。「事前に質問票に記入いただき、その結果とも照らし合わせてお勧めの行動をアドバイスする」と説明。「入浴時以外は休日も着用いただくが、脈拍や体動など健康に関するデータのみで、位置情報などは収集していない」という。

 

運行管理者は、ドライバーの体調をパソコンの管理ツールで確認できる。睡眠状態や疲労度は緑、黄、赤で色分けされ、ドライバーそれぞれの漫然運転リスク時間帯の予測も一覧で表示される。「その時間帯に休憩時間を充てるなど、リスク回避に活用いただければ」。

 

 

出庫後も1時間ごとにリアルタイムの疲労度を表示。「疲労感を感じやすい時間帯やストレスを感じる業務内容もドライバーによって異なる。それぞれの傾向を把握することで、適切な休憩の割り当てや業務の最適化が図れる」と胸を張る。

 

 

導入のメリットとして、「管理コスト削減」「保険料の抑制」「働き方改革や人材確保」などを挙げるが、「タクシー業界ではドライバーさんの生産性が向上し、売上が上がったというデータもある。適度な休憩を適切なタイミングでとることで、きちんと疲労を回復していたことが要因と考えられる」。

 

「ドライバーさんからは、『疲労感など言いにくいことを運行管理者側から言ってくれてありがたい』、運行管理者さんは『体調確認は難しいものだが、画面を見れば一目で分かる』と、それぞれ評価いただいている」。運送事業者が懸念する「ドライバーがきちんと着用するのか」という点については、「8割の方に着用いただけている」という。

 

 

長年、睡眠を研究してきた後藤氏は、「睡眠の不具合は様々な健康課題につながる」と指摘。「当社の調べでは、睡眠不足によって急減速が3.6倍に、疲労度が高まると車間距離不足が1.6倍に増加したというデータもある。健康で事故のない運行に、ドライバーと運行管理者さんが二人三脚で取り組んでいただけたら」。

 

◎関連リンク→ コンディションナビ