アウトソーシングテクノロジー(東京都千代田区)は、バイタルデータを活用した従業員調査を行うことで、働きやすい環境作りをサポートする新事業を開始した。

エンジニア派遣をメーン事業とする同社。約1万6000名の社員のうち3分の2以上がエンジニアで、その大多数が顧客先に常駐して業務に従事しているという。

同社イノベーションプラットフォーム部の伊藤幸弘氏は、「当社が得意とする人材の分野で、特に要望が多かった『従業員エンゲージメント向上」で、何か顧客に貢献できないかと考えた」と新サービス開発の経緯を説明。「エンジニアが顧客先に常駐し稼働しているため、潜在的な課題を把握しやすいというアドバンテージもある」という。新サービス導入をきっかけに、「組織改革など人にまつわる部分の支援ができるのも、派遣会社ならではの強み」とも。

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今回、同社が新たに提案する「非接触バイタルセンシング」とは、非接触でバイタルデータを測定できる技術を活用したサービスで、「パルスサーベイ」と組み合わせることで、より従業員の本音に近い状況を把握することが可能になるという。「パルスサーベイ」とは、従業員の満足度調査に使われる調査方法のひとつで、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施するもの。

 

同社の峯尾岳大氏は、従業員の満足度を把握することについて、「人材の確保、そしていかに長く働いてもらうかは、多くの業界の共通課題。『人的資本に対する投資』というのは今の経営のキーワードにもなっている」とし、「特に物流業界は2024年問題も抱え、人材流出をより避けなくてはならない状況。ドライバーをしっかり守り、働きやすい環境を作ることがポイントになってくる」と説明する。

 

そして、「調査により、組織が抱えている課題を把握し、解消へとつなげることができる。不満をケアすれば、従業員のパフォーマンスが上がり、顧客に対するサービスの質も上がっていく」。

 

「パルスサーベイ」は高頻度で行う調査のため、「リアルタイムで変化や傾向を把握でき、より実効的な効果につなげていける」のが特徴。「従業員と一緒に立ち止まり、振り返る時間が作れる」。また、個人のデータを積み重ねていくため、「連続的な状態の変化を把握でき、より早く問題を発見し、改善に生かすことができる」。

 

さらに、従業員のストレスを定期的に把握することで、「離職の兆候を発見し、防止することにつなげられる」ため、メンタル疾患の防止や、新人受け入れ時など、「人事戦略として活用可能」だという。

 

一方で、「こうした調査は真剣に回答しているとは限らない」という課題も。「こんなことを書いたら評価が下がるかも」「上司に指示された」「雰囲気的に本音は書けない」などの理由から、「実態との乖離はどうしても発生する。バイアスがかかった情報をもとに改善につなげようとしても、正しい現状把握にならない」。

 

そこで、同社が提案するのが、「本音で答えていない可能性のある人」をあぶり出す「非接触バイタルセンシング」による検査を活用した調査。スマートフォンのカメラを使い、「非接触バイタルセンシング」で脈拍や呼吸、交感神経・副交感神経の数値を測定。独自技術の「色素成分分解」で、肌の色や周囲の明るさに関係なく、計測が可能となっている。「ドキッとしたり、思い当たることがあったりする時は数値に兆候が出る」という反応を検知し、「本音ではない回答」を要フォローとしてピックアップする。

 

具体的な流れとしては、従来のアンケート項目から、特に本音を確認したい項目をピックアップ。従業員がスマートフォンで自分の顔を撮影しながら表示された質問に答えると、バイタル情報が同時に測定される。「心からの『はい』なのか、本当は違うのに『はい』と答えたのかが分かる」。集計方法や既存システムとの連携は、ユーザー企業のニーズに合わせて設計が可能。

 

注意すべきは「本音かどうかを見抜くためのものではない」ということ。「本音で答えられない状態にある人が誰なのかを明確にすることが狙い。不満を飲み込んでいる人を個別にフォローアップし、離職を防止したり、改善したりすることが大切」。伊藤氏は、「逆に言えば、本音で回答していると思われる人の意見を見つけることも可能。経営課題に直結するアプローチができる」と付け加える。

 

同社では今後、人手不足に悩む運送事業者での活用を訴求していくという。

 

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