第十二話.岡野、将来を考える。

 その後も、俺は補導されては学校に戻り、家出をしてはテキ屋に戻るを繰り返していたが、ある日、補導をされて連れ戻され、渋々学校に通っていた俺に、懐かしいヤツが声を掛けてきた。

「岡野ー」
「お。大輔」

 後ろから声を掛けられ、足を止める。
 片手を上げて近づいてきたのは、小学校時代からの幼馴染で、親に駄目と言われるからと離れて行くヤツばかりの中、家の事情を気にせずに付き合ってくれた貴重な友達だ。

 中学に入り、俺がグレた頃から何となく疎遠になっていたが、今でも大事な友人でもある。

「久しぶり」
「おー」

 俺は大輔が追いつくのを待って、そのまま並んで歩きだす。

「ずっと学校来てなかったよな? 何やってたの?」
「あー、うん、駅前にタコ焼き屋出てるじゃん? あそこでテキ屋に声掛けてさ。テキ屋でバイトしてる」
「マジか……」

 大輔は何とも言えない顔をして肩を竦めた。

「もうすぐ卒業だろ? どうすんの?」
「どうするって……」

 どうするかな。

「高校は?」
「行かない」

 行く金も無いし、正直行く意味が無いと思う。

「そっか。働くの?」
「うん、そうだな。……うん」

 少し考えて頷くと、大輔は真顔で俺に視線を向けてきた。

「テキ屋はもう辞めた方が良いと思うよ。もうすぐ卒業だろ? 中卒でもちゃんとしたとこで働く方が絶対良いって」
「――うん」

 そうだな。
 俺も、いつまでもテキ屋で働こうとは思わない。
 卒業したら、ちゃんと仕事、探すかな。
 俺が頷くと、大輔は安心したように笑った。

***

 それから数か月後。
 俺は中学を卒業した。
 大輔に言われたこともあり、一念発起で仕事を探し、電気屋の工場で働きだした。

 流れ作業のような軽作業の仕事だ。

「じゃ、これやって」

 先輩が目の前に箱を置く。
 俺はよっしゃ、と勢いよく作業をこなしていった。
 俺は割と器用な方だから、結構早くに片付く。

「終わりました!」
「じゃ、次これね」
「――へ?」

 目の前に次の箱がどんっと置かれた。

 ……えぇ……。

 仕事の仕組みなんて知らなかったから、早くやれば早く終わると思っていた。
 自分のノルマが終われば終わりと思ってたが、次のヤツを片付ければ、また次のヤツが目の前に置かれる。

 ――早くやる意味無くね?

 やってもやっても、次の箱が目の前に置かれる。
 いつまでやっても終わらない。

 ――なんか……。つまんないな。

 自分が売った分だけ金が貰えるテキ屋と違い、言われたことだけ淡々とこなす作業。
 無性に不毛に感じた。
 俺には合わないな。そう思った。

 モヤモヤとしながら、仕事をしたが、結局その仕事は、三ヶ月くらいしか、続かなかった。
 他のバイトを試してみたりもしたが、やっぱり俺には合わない。

 どこも長続きできなくて、結局俺は。

 元の、テキ屋に戻ることになった。

to be continued…


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