来年2月1日からテールゲートリフター(TGL)を使う荷役作業者に対して、事前に特別教育を行うことが義務付けられるのを前に、インストラクター養成講座が全国で開かれるなど準備が進められている。先生役は単に装置の取扱説明だけではなく、作業者が労災を起こさないために何をどう教えるかが重要だが、これに義務化で変わること、一層の注意が必要になることも合わせて知っておきたい。

 

TGLの特別教育の義務化は、多発する荷役作業時の墜落、転落を受けて、今年3月の法改正で決定した。学科4時間と実技2時間の合計6時間の受講が必要で、ドライバーだけでなく操作の可能性がある庫内作業員も対象となる。

先生役は「事業主が選任したTGLの知識、経験を持つ者」(厚労省労働基準局総務課)で、専門の資格は不要だ。同養成講座の講師である陸災防の井上健氏は、「会社を出るとドライバーは基本1人。現場で安全に操作するために正しい知識を伝えることが重要」と話す。関係する法令や具体的な操作方法、実技の重点などは専用テキストが販売されている。

 

受講者に終了証明は必要?

 

事業者は実施記録を3年間保存する義務があるが、ドライバーが個別にこれを携行する必要はない。しかし、「今後は荷主から終了証明を見せてほしいと言われる可能性も出てくる」(井上氏)。また、特別教育は退職までに1回受講すれば良いが「終了証明は仮に転職しても受講済みの証拠になる」との見解を示している。

 

用途外での事故。労災保険は?

 

広島市内のある事業者は「カゴ車の転倒や荷崩れするので、ドライバーの多くは荷物だけ載せる方が危ないと考えている」と話すなど、作業者が一緒に乗ることが黙認されているが、本来、TGLに人が乗るのは用途外。今回の義務化を見直すきっかけにしたい。

 

TGL上の荷物が転倒した事故での労災保険は「作業者に治療費は払われるが、休業手当は労働者側に重大な過失があるため支給制限を受けることも。会社側はTGLに人が乗っているのを知っていて止めなかった場合、給付に要した費用を別に徴収されるほか保険料も上がる」(同)という。

 

なお、事故を起こした際に特別教育が未実施だったことが発覚すると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金。また労働安全衛生法120条の規定で、違反行為をした労働者自身も50万円以下の罰金が科されるケースがあることも指導内容に加えたい。