下請けにまわるほど削られ、いつのまにやら、採算が取れない料金へと変化していく運賃。そのうち、多層構造(多重下請構造)を知った荷主が中抜きを排除し、「物流費削減」のもと、それまでよりも安い運賃で貨物を出すようになり、気付けば元の運賃まで安くなる。残念ながらこれが物流業界の実態だ。

2020年4月に「標準的運賃」が国土交通大臣から告示された。これは、元請けや下請けなど関係なく、あくまで実運送事業者が収受すべき運賃が示されている。とすれば、多層構造のもとでは、この「標準的運賃」はどう考えても矛盾している。「標準的運賃」の下では、下請けだろうが孫請けだろうが5次請けだろうが、収受すべき運賃に差はなくなるはずだからだ。

しかし、現実はというと、相変わらず運賃も多層構造も改善されていない。末端で仕事をこなす運送事業者が収受する運賃は、再生産可能な額には程遠く、採算割れの状況だ。そこでは、「安く走ってもらえるから」という出す側の論理と、「安くても仕事があるだけまし」という受ける側の論理がかみ合ってしまい成立している。

ただ、燃料やタイヤ、その他あらゆるコストが上昇している現在、こうした状況が続けば、体力を失い、市場から去らざるを得ない事業者が増えてくることも懸念される。事実、倒産件数が徐々に増加傾向にあることは、それを如実に物語っているのかもしれない。

「標準的運賃」を形骸化させないためにも、矛盾する多層構造という悪しき慣習は、業界として失くしていく努力が必要なのではないだろうか。

 

◎物流ウィークリーでは11/14まで 多層構造緊急アンケート を実施しております。

是非ご協力ください。