米や青果、冷蔵・冷凍食品、工業製品などさまざまな輸送を手がける會津通運(渡邉拓也社長、福島県会津若松市)は、昨年からアセンド(日下瑞貴社長、東京都新宿区)の運送管理システム「ロジックス」を導入している。「すべての業務を一気にDX化するのは、やはり難しい。さまざまな業務を整理しながら奮闘している」と語る取締役の五十嵐美栄氏に話を聞いた。

「ちょうど基幹システムの刷新を検討していたときに、ト協が開いたDX化がテーマのセミナーに参加したことがきっかけ」と切り出す同氏。「それまではアナログからデジタルに移行することがDXだと認識していたが、登壇されていたアセンド日下社長の講演を聞き、『単純にデジタル化することだけがDX化ではない』と気づかされた」と振り返る。

「デジタル化の先にあるのがDX化」と語る五十嵐氏。「ロジックス」の導入によって、「従来は深く追求してこなかった稼働分析などを行っていきたい」と意気込む。「デジタル化で算出された数字はもっと分析し、活用ができるはず。これまで何となくで終わらせてきた『この業務はなぜ売り上げが少なかったのか』といった部分を突き詰めていく」

「当社では、経理や請求管理などはそれぞれパッケージシステムを導入し、事務や配車を担当する社員は、それとは別にエクセルで独自に管理する仕組みを作ることもあった」という。「配車も含めてどの業務も属人的にならず、誰でもできるようにするのが理想。これまで独自のエクセルで行っていた作業も、『ロジックス』で代替することで全員が共有し、きちんと管理できる」

ただ、「社員からの反発もあった」とも。「新たなことを始めようとすると、どうしても、フラットに考える前にネガティブになってしまう」と寄り添う。「そういうときに、アセンドさんが何度も訪問し、一生懸命にサポートしてくれた。第三者が間に入ると冷静に話ができた」

「とはいえ、DX化は、まだ途中の段階」と話す五十嵐氏。「工業製品の配送は平日のみだが、食品は365日、配送時間も深夜や早朝などまちまち。そのため、ドライバーの勤務時間や休日もバラバラになる」とし、「これらすべての業務を一気にDX化するのは、やはり難しい作業。アセンドさんの力を借りながら少しずつ前進しているところ」だという。

同社では、アセンドの人事制度設計コンサルも活用し、等級制度を導入。「ドライバーは最低でも年に2回、事務方は年4回、面談の場を設けることになったが、面談担当者によって価値観や評価基準が異なってはいけないため、『どういうドライバーになってほしいか』など、等級ごとの定義の言語化を図った」

「たとえば、入社間もない新人ドライバーは、『コミュニケーションが取れる』、中堅は『自分の技術を高めて』、ベテランは『その技術を周囲に広めてサポートして』など、等級ごとに設定している」とし、「下を育てる役割を担うポジションがあっても良いのでは、という観点も盛り込んだ」という。

いわゆる「2024年問題」も間近に控えるが、同社では10年ほど前に労働時間の上限を定めるなど労務管理を徹底。「2024年問題には対応できているため、焦って何かをすることはない」

「当時、基本給を上げたものの、もっと走りたい・稼ぎたいというドライバーからは不満もあった」と回顧する五十嵐氏。「今回の人事制度の刷新では、ドライバーから『自分の時間や家族との時間も持てるし、うちの働き方がやっぱり良い』と言ってくれたことで、これまでやってきたことが間違いではなかったと思えた」と目を細めていた。

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