コロナ禍で人々の生活スタイルや企業の働き方が変化する中、荷動きにも異変が生じている。経済活動が制約され、総体的に荷動きの鈍化がみられるが、毎年駆け込み需要など、繁忙期で稼ぎ時でもある年度末も、荷動きは鈍重で、「いつもの3月の動きではない。覚悟はしていたが、これほど動かないとは思わなかった」と、危機感を募らせる事業者の声も聞こえてきた。

稼ぎ時の象徴である引っ越しだが、動きは鈍かった。東京都内の引越事業者によると、「法人はリモートなどの勤務体制の変化と、世情の成り行きを見ながらの人事異動で、転勤等の動きが滞っている」という。さらに、「学生も大学が開講せずオンラインなどで講義が行われているので、各地から上京して来ない」という。本来、動くはずのものがコロナ禍で動かず、仕事も激減しているのが実情だという。そのため、少ないパイの奪い合いで、料金のたたき合いが行われており、引越料金は値下がり傾向を余儀なくされているという。

自動車部品の輸送を手掛ける埼玉県の運送事業者は、「荷動きは下がりっぱなしで、先行きが不透明」とする上、「半導体工場の火災を受けて、今後、夏にかけて生産量はさらに下がると考えられる」とまさに泣きっ面に蜂の状況。

 

同社は、コロナ禍で、トラック8台分の仕事を失ったという。「自動車メーカーは、コロナにかかわらず、運転免許を取得しない若者が増えていることを受け、減産計画を立てていた」ため、同社では、「幸いにも自動車部品輸送の比重を徐々に減らしていた」という。「減らしていなかったら、今頃どうなっていたかと思う」と、安堵の表情を浮かべるが、それでも荷動きの悪化に、危機感を募らせている。

鋼材輸送を手掛ける埼玉県の運送事業者は、「コロナ、そしてオリンピックに振り回されている」という。「当初、都内の主要工事は2019年中に終わらせ、2020年は9月以降は工事ができないというスケジュールで動いていた」が、コロナでオリ・パラが1年延期になり、そのスケジュールが2021年に移行。しかし、「ゼネコンが関係するような工事は、急に『それなら1年間だけ工事します』というようなものではないので、結局、休工でほとんど動いていない」という。

アパレル輸送を手掛ける東京都内の運送事業者は、百貨店等の休店で、コロナ初期に特に影響を受けたというが、「再開後もリモートという働き方や外出自粛などで洋服を買わない、買っても『店に行かずネットで』となり、店舗の売り上げが激減している」という。「当社は車建てで契約しているので、搬入量が減っても売り上げは変わらないが、売上不振で店を閉めることになれば配送先を失う」。そのため、同社の社長は、「いまは売り上げを維持できていても先々が心配」と不安を口にする。

ビア樽を運んでいるという東京都内の運送事業者も、「コロナでイベントが中止になり、樽が全く出荷されず、売り上げは激減している」という。イベント中止や不要不急の外出を控える自粛の定着が進み、その影響が荷動き減に直結していることがうかがえる。

一方、家電配送を手掛ける東京都内の運送事業者は、一人10万円の給付金と巣籠りで家電の買い直しが活発化し、エアコンや冷蔵庫、洗濯機など白物家電のリサイクル回収量が増えているという。そのため同社では、家電のリサイクル回収に注力しているという。

 

同じく家電配送を手掛ける埼玉県の運送事業者も、「荷動きはよく、運賃も上がっているので、採算は取れている」と語る。同社では、建築資材の輸送も行っているが、「動かない建築資材の赤字分を、家電配送で補填している感じ」と、家電の好調ぶりを話す一方、建築資材の荷動きの悪さに不安を抱えている。

精密機械を扱う東京都内の輸送事業者も、「コロナで動きが悪く、従来の3分の2の売り上げ」だという。幸いにも同社は、「5G関係の仕事が入ったことで、売り上げを落とすことは免れた」というが、「本業の精密機械が動いてもらわないとどうにもならない」と話す。

日用品を輸送する千葉県の配送事業者は、「コロナ当初は巣ごもり特需で忙しかった」というが、「それも次第に落ち着き、今は動きが鈍くなってきている」という。同社は地元自治体の仕事を長きにわたって請け負ってきたが、今年、同業社が安価な価格で入札し仕事を失ったという。「コロナ禍で、仕事が少なくなったことから、これまで見向きもされてこなかった仕事にも、目をつける事業者が出てきた」とし、「安心して仕事ができなくなってきた」と頭を抱える。

「新型コロナウイルス」で緊急事態宣言が三度も発出されるなど、国内に大きな混乱を招いているが、物流業界へも総体的に荷動き減という大きな影響を及ぼしており、先行きの不透明感は拭えないのが実情。さらなる影響が懸念される。