公正取引委員会は5月25日、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用について、昨年10月に開始した荷主と物流事業者との取引に関する調査結果を公表した。

荷主3万社、物流事業者4万社に書面調査を実施し、それぞれ1万1438社、1万8685社から回答を得た。さらに書面調査の結果を踏まえ、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分の転嫁拒否が疑われる事案について、荷主19社に対する立入調査を実施した。

 

書面調査及び立入調査の結果を踏まえ、独占禁止法上の問題につながるおそれのあった荷主641社に対し、具体的な懸念事項を明示した文書を送付。注意喚起の中で最も多かった行為は「不当な給付内容の変更及びやり直し」で351件、さらに「代金の支払遅延」(161件)、「代金の減額」(92件)と続いた。

問題につながるおそれのある事例として、「荷主は、物流事業者に対し10時間以上の待機をさせたが、待機料金を支払わなかった」(食料品製造業)、「荷主は物流事業者に対し、毎月の支払額から一律5%減じた金額を支払っていた」(非鉄金属製造業)、「荷主は、自社が取引先から代金を収受するのが遅れたことを理由に、物流事業者への支払いを遅らせた」(総合工事業)などがあったという。

 

公取委では今回の調査結果について、荷主・物流事業者を対象とする講習のほか、関係省庁・関係団体を通じて周知徹底を図り、違反行為の未然防止に向けた取り組みを進めていくとともに、違反行為に対しては厳正に対処していくとしている。