【質問】タイムカード打刻後にすぐ作業を開始せず、仲間と長時間雑談をしている社員への対応に困っています。同業他社の対策事例があれば教えてください。

 

ドライバーの労働時間管理にタイムカードを使用している運送会社から、「必要以上に早く出社してタイムカードを打刻した後、すぐに作業を始めず、仲間と雑談をしている社員がいて困る」との悩みを聞くことがあります。

「2024年問題」を目前に控え、ドライバーの労働時間を10分でも短縮したい時期に、このような社員は大変気になるものです。そもそも、ドライバーの労働時間管理にはタイムカードではなく、多くの運送会社がデジタコやアルコールチェックの記録を利用しています。そのほうが労働時間の実態に合致しており、タイムカードよりも正確に捉えられるためです。

しかし、運送会社の中には、社内の労働時間を一元管理するため、全員にタイムカードを打刻させている会社があります。事務員や管理者、庫内作業員などの場合は、早く出社してタイムカードを打刻しても、始業時刻との間に大きな乖離がない限り、就業規則の始業時刻から労働が開始されたと推認されますが、ドライバーの場合は始業時刻が毎日変化し、定まった始業時刻がないため、タイムカードに記録された時刻が労働時間の開始時刻と推認されやすいのです。特にタイムカードとデジタコの両方を利用している会社の場合、それぞれの時刻に乖離があると、その間に労働していない記録が存在しないため、タイムカードの時刻で判断されることがあるので注意が必要です。

より実態に合致した労働時間を把握するためには次の対策が考えられます。

①タイムカードを利用した労働時間管理をドライバー以外の社員に限定し、ドライバーの労働時間管理はデジタコやアルコールチェックのデータを活用するルールに変更する

②タイムカードの設置場所を点呼場に変更し、実際に作業を開始する直前に打刻するルールに変更する

③「タイムカードの打刻に関する注意事項」を会社内に掲示し、全員にタイムカードの打刻ルールについて注意喚起する

④タイムカード打刻後、明らかに労働していない時間がある場合は、その都度実態を記録し、本人に通知の上で労働時間および賃金の対象から除外する

⑤通常の作業開始時間より前に作業する必要がある場合は、「残業申告制」により事前申告を義務付け、会社が認めた場合に限り、労働時間とする

 

(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)