「傭車の位置情報が分かれば電話せずに済むのに」「到着時間確認の伝言ゲームをやめたい」「異なるメーカーの車載器を搭載しているグループ会社の車両を一緒に管理したい」―。ネットワーク型デジタコなど、GPSを活用した運行管理システムを導入する事業者が増えているが、メーカーごとに仕様が異なるため、一元管理は難しいとされてきた。この見えない壁を崩す配車マンにとって夢のようなサービスが誕生した。業界横断型動態管理プラットフォーム「traevo(トラエボ)」だ。デジタコ大手の矢崎エナジーシステムやトランストロンも参画している同事業について、traevo(東京都港区)の鈴木久夫社長(写真前列中央)に話を聞いた。

 

同社は、運輸デジタルビジネス協議会(TDBC、東京都港区)での車両動態管理に関する取り組みを社会実装するため、今年1月に設立された新会社。TDBCの活動のなかで、「機器やシステムに依存せずGPS情報を横断的に可視化する」ことを目的とするワーキンググループ(WG)が発足し、議論を重ねてきたという。

 

首都圏ホールディングス(東京都板橋区)の駒形友章氏がリーダーを務める同WGには現在、52社が参加。トランコムや鈴与カーゴネットなどの物流事業者に加え、トヨタ自動車や山崎製パンなどの荷主も名を連ねる。メーカー・システム会社では、普段は競合関係にある各社がユーザーの利便性向上のために協力。前述の2社に加え、データ・テック、タイガー、フレクトなど、様々な企業が参加している。

 

 

同WGでは大規模な実験を既に実施し、効果が出ることを実証している。「20台の運送事業者さんでは、ドライバーや荷主との電話やり取りが減ったことで、2週間で約100時間の作業時間を削減できた」。荷主側も、配送計画の作成や到着時間の問い合わせなどの管理工数が激減。「自動車部品メーカーでは、年間で約1万7000時間も削減できる試算が出た」という。「生産ラインを空けて部品の到着を待っている着荷主では、遅延は即損失に繋がるため、運行状況をリアルタイムで知りたいというニーズは強い」。

鈴木社長は「このプラットフォームを物流業界のインフラとして普及させる」とし、「災害時の状況把握や支援物資輸送への活用、ドラレコ映像を活用した警察への防犯協力​、ドライバーの健康起因事故防止​、CO2排出量の精緻な算出などの実現を目指していく」と先を見据える。

 

同サービスの利用料は、「1台あたり月額1000円以内を想定している」という。「まずは効果を実感いただきたいということで、今月13日から無料トライアルを実施する。ぜひ試してほしい」。

 

 

「2025年までに車両20万台めざす」

 

traevoは13日、会社設立会見を開催。鈴木社長は、「追加機器なしで安価かつ簡単にAPIで繋ぐプラットフォームを普及させ、物流業界での情報の断絶をなくしたい。まずは2025年までに車両20万台での活用を目指す」と意気込んだ。

 

駒形氏は、「当社にも、日々、荷主さんから到着確認の問い合わせが入り、担当者が電話やメールで回答している。ドライバーにも機器をたくさん持たせて出発させている。このプラットフォームが業界に広がることで各社の生産性が向上することはもちろん、なにより現場で頑張ってくれているドライバーの負担を大幅に減らすことができる。ぜひ活用してほしい」と呼び掛けた。

 

なお、東ト協の遠藤啓二常務も登壇し、「社会に求められているすばらしい取り組み。大いに期待している」と祝辞を述べた。

 

 

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