【質問】就職氷河期世代の採用に対し、各種支援や助成金があると聞きましたが、どのような制度でしょうか。また、運送会社が取り組む上での留意点などがあれば教えてください。

 

就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1990〜2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、現在の年齢で35歳から54歳にあたります。

厚労省は令和3年12月24日に「就職氷河期世代支援に関する行動計画2021」を決定し、今後も引き続き、この世代に対する支援策を強化することを打ち出しました。

現在、運送業関連では「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」が実施されており、求職者に対して大型、中型、準中型などの運転免許取得支援と運送事業に関する基礎知識の受講や職場体験などの支援を行っています。国の予算で就職に活用できる免許が取得できるため、この制度に申し込む求職者が増えています。

以前、弊社が関与した運送会社の中に、これと同様の制度(当時は県が主体で運用していた制度)を活用し、ドライバーを3人(男性2人、女性1人)採用した会社がありました。当時、経営者は「こんなに良い制度があるとは知りませんでした」「免許を取得させ、教育までしてくれて、求職者をあっせんてくれるので本当に助かります」と感激しており、「これから定着するように大事に育てますよ」と話してくれました。

現行の支援制度は全日本トラック協会が業界団体としてその運営に携わっています。関心がある事業者はハローワークに求人申し込みをした後、全ト協のホームページを通して事業者登録をすると、優先的に求職者を紹介してもらえる制度になっています。

さらに、現在の制度では就職氷河期世代の人材を採用した場合に、一定の条件に当てはまれば、事業者に助成金が支払われる仕組みになっています。「就職氷河期世代安定雇用実現コース」という助成金で、対象となる労働者を雇用した場合に30万円×2回の計60万円の助成金がもらえることになります。

人手不足に悩む運送会社に良いことずくめの制度であり、活用しない手はないと言えます。

ただし、留意すべき点は、対象となる求職者は年齢要件のほかに、「過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない方」や「失業・非正規雇用労働者の方」などの一定の条件があり、正社員としての経験が少ない人であるため、丁寧な指導や親密なコミュニケーションに十分配慮し、寛容な心で育てる必要があります。

 

(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)