燃料高騰、2024年問題、人材不足など、運送業界ではコストアップ要因が山積で、運賃値上げや燃油サーチャージの収受ができなければ、今後の事業継続も困難視されている。

 

こうしたなか、大手鉄鋼メーカーX社の物流子会社が下請運送会社に対して、「今年4月頃から燃料価格が値下がり傾向にある」ということで、「運賃内に含まれている燃油サーチャージ分の数%を値下げする」と通知していることが分かった。

 

同物流子会社から輸送依頼を受けている運送会社たちは、「燃料価格は下がる傾向がなく、高値で横ばいなのに、何を根拠に値下げ話が出てくるのか。正に寝耳に水」と反発している。

 

同物流子会社のアンダーで自動車用鋼材を輸送する運送A社に話を聞くと、「通知が来たので、値下げの根拠を担当者に電話で確認すると、『当社で計算したところ、4月ぐらいから燃料価格が下がるのに伴い、運賃内に含まれている燃油サーチャージ料を2%程度、値下げする』と説明された」という。

 

A社社長は、「運賃内での燃油サーチャージ料の比率や金額換算でどれくらいになるのかを調べるために計算方法を尋ねたが、『あくまでも当社独自の計算方法で開示できない』と説明を一切受けることができなかった」と話す。

 

 

また、別の大手鉄鋼メーカーY社の物流子会社でも、同様の文書を協力会社に送っていることが分かっている。

 

同社の鋼材輸送を請け負っている運送B社に話を聞くと、「物流子会社から、燃料価格が下がることを理由に、運賃ではなく、合算している燃油サーチャージから値引きするという案内が来た。当社としては、燃油サーチャージの比率はもちろん、値引き計算方法の開示を求めているが、『独自の計算方法で開示できない』と言われた。傭車としては、それ以上、根拠を求めることはできなかった」と話す。

 

 

 

一方、同じ荷主でも、元請となる物流会社が異なることで大きな差が生じているようだ。

 

荷主は同じ鉄鋼メーカーY社だが、運送B社と異なる元請会社のアンダーで走る和歌山県の運送C社に話を聞くと、「今までダメだった高速代も出してもらえることになっている」とし、「燃油サーチャージ分の値引きは初めて聞いた。こんな時期にそんな話があるのか」と驚きを隠せない様子。

 

運送B社に運送C社の状況を説明すると、「和歌山エリアでは物流子会社ではなく、一般の物流会社が元請になっている。そういうことから、同じ荷主の仕事にもかかわらず、こちらはサーチャージ分をカット、あちらは値引きなしで高速代プラスと条件が変わっているのだろう」と苦笑。

 

「自分も先輩経営者から同様の話を聞かされたことがあるが、戦時中にさかのぼるほどの昔話。いまだに当時の影響があり、元請によって条件が異なるのは、われわれ下請けにとってはありがたいことではない。行政が全国的に調査し、運賃や料金などの統一を図ってもらいたい」と語った。

 

大阪市の運送経営者は、「大手の幹線輸送では元請が異なると、同じ距離を運行しても運賃に差がある話は聞いたことがあるが、まさかメーカー直の物流子会社の方が厳しく、一般の物流会社の方が良い条件という話は初めて。中小事業者だけでは太刀打ちできないので、今後は荷主だけでなく、物流子会社へも行政が厳しい目を向ける必要があるのではないか」と指摘する。