2020年度は、大型車の車輪脱落事故の発生件数が、統計史上最多となる131件(対前年度19件増)だった。この結果を受けて、国交省は大型車の車輪脱落防止「令和3年度緊急対策」を取りまとめ、10月から「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を来年2月28日までの期間で実施している。車輪脱輪の発生状況と、その原因について考える。

年度別の大型車の車輪脱落事故の発生件数を2011年(平成23年度)からみてみると、11年度が11件、12年度が15件、13年度が19件、14年度が45件、15年度が41件、16年度が56件、17年度が67件、18年度が81件、19年度(平成31年年度/令和1年度)が112件、20年度が131件とほぼ右肩上がりで増え続けている。

20年度の車輪脱落事故の月別発生件数をみると、131件のうち、令和2年11月~令和3年2月に87件(65%)発生と冬期(11月~2月)に集中。車輪脱着作業から車輪脱落事故発生までの期間は131件のうち、車輪脱着作業後1か月以内に、76件(58.0%)の車輪脱落事故が発生しており、特に東北地域で事故が多く発生している。

なお、車輪脱落箇所は左後輪が多く、その原因として、「右折時は、遠心力により積み荷の荷重が左輪に大きく働く」「左折時は、左後輪がほとんど回転しない状態で旋回するため」「道路は中心部が高く作られている場合が多いことから、車両が左(路肩側)に傾き、左輪に大きな荷重がかかる」の3つが考えられるとしている。

 

これらの結果、車輪脱落事故の発生原因は、タイヤ交換時の作業不備とタイヤ交換後の保守管理の不備の2つの要因と推定される。そこで、事故防止対策の積極的な取組みとして国交省は、「確実な締め付け」「増し締めの実施」「日常の点検」「ホイールの履き替え」の4つのポイントの周知徹底を促している。
また、整備管理者に対しては、「計画的なタイヤ交換作業の実施」「社内でタイヤ交換作業を行う際は、正しい知識を有した者が実施」「錆が著しいディスク・ホイール、スムーズに回らないボルト、ナットは使用せずに交換。特に、ホイール・ボルト、ナットが新品の状態から4年以上経過している車両は、重点的に確認」
「脱落の多い左後輪について重点的に点検」「積雪地域や舗装されていない道路を走行する車両について、入念に点検」「増し締めをやむを得ず車載工具で行う場合の実施方法を作業者(運転者)に指導。なお、車載工具で増し締めを行った場合は、必ず帰庫時にトルクレンチを使用して規定のトルクで締め付ける」ことが重要としている。

さらに、トラックにおいては、自社でタイヤ交換作業を行った車両による事故が多く発生していることを踏まえた対策として、目視で誰でも簡単にチェックすることができるホイール・ナットへのマーキングやナットインジケーターを活用して、ホイール・ナットの緩みの点検を重点的に実施することがより効果的だとしている。

国交省では毎年、冬用タイヤに交換する時期に、大型車の車輪脱落事故が多発していることから、「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を実施しているが、今年は事業者から「11月からでは遅い」との意見があったため、1か月早めて10月から実施。各地方運輸局が行う街頭検査における、大型車のホイール・ナットの緩みの確認や啓発チラシを活用して確実な作業実施を依頼するなど、車輪脱落事故防止対策を強化した。