コロナ禍をきっかけに導入した企業も多かったテレワーク。職場以外の場所で仕事ができるのは便利である半面、プライベートとの境界があいまいになり、オンとオフの切り替えが難しい側面もある。例えば、社用携帯に緊急ではない用件で時間構わず連絡してくる例などがそれにあたる。

そのような中、注目されているのが「つながらない権利」だ。この権利は、労働者が就業時間外に仕事のメールや電話などへの対応を拒否できる権利のことを指す。通信会社が3月に行った調査では、つながらない権利への侵害が進んでいる可能性が指摘された。2019年の調査時と比べ、「上司から就業時間外において業務に関して緊急性のない電話やメールがあり、通話・返信などを週1回以上対応している人」の割合が14.9%から22.2%へ増加した。

 

今年3月には、厚生労働省から「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が公表された。これをきっかけに、日本でもつながらない権利に対する意識の広がりが期待される。

就業時間外の業務連絡であっても対応しなければ責任感が足りないと思われ、今後のキャリアに悪影響を与えるかもしれないという恐怖感から、対応をせざるを得ないと感じている人は意外と多いと予測される。仕事への柔軟なアプローチが可能となった半面、仕事と私生活の境界線があいまいとなってオーバーワークになりがちになるという問題もある。

「つながらない権利」を実際に尊重している企業の事例を見ると、「夜間と休日の社内メールを原則禁止」「休暇中の会社との連絡は一切禁止」など、時期や時間帯を具体的に示すことで、社員間の齟齬が起こらないように工夫されている。社員のストレスマネジメント対策は、日本社会における重要課題の一つとなっている。運送業界でも一人ひとりが働きやすい環境を整えるためには、つながらない権利を今後考えていくのも重要なポイントではないだろうか。