最低賃金が改定され過去最高の上げ幅となった。引き上げ後の時給を都道府県別で見ると、最も高いのは東京で1041円、次いで神奈川が1040円、大阪が992円となっている。また、最も低いのは高知と沖縄で820円、次いで8つの県で821円となり、最低賃金は全ての都道府県で時給800円を超えることになった。

 

政府は今年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針で「早期に全国加重平均1000円」と記している。一方で新型コロナウイルスの影響が続く中で、特に中小企業からは「大幅な引き上げで経営への影響や雇用の減少などが懸念される」という声が出ている。

 

運送業では「2024年問題」まであと3年となったが、「最低賃金が上がっても実際の給与は上がっていないのが現状」「身近な生活用品などが値上がりしているのに、それに年収の伸びが追い付いていない」といった声も聞かれている。

 

最低賃金に関しては、2018年10月から翌年10月の期間などに県の最低賃金以上の金額で定期賃金を支払わなかったり、有給休暇の賃金を所定の支払日に支払わなかったりしたとして大田原労働基準監督署は那須塩原市の運送会社と代表取締役の男性を、最低賃金法及び労働基準法違反の疑いで宇都宮地検に書類送検している。運送業の同様の違反は全国各地で起こっており、業界の厳しさが伺える。

そのような中で厚生労働省は、最低賃金の引き上げによる中小企業への影響を減らすため「業務改善助成金」の上限額を引き上げるなど、支援も強化している。この助成金は、従業員100人以下の事業所で、職場で最も低い従業員の時給と都道府県の最低賃金の差が30円以内の場合が対象となっている。時給を引き上げた額や対象の従業員の数に応じて、助成金の金額が決まるというものである。こういった制度を活用することも一つの手だ。

 

最低賃金の引き上げに関しては、さまざまな意見がある。採用コンサル事業を手がける企業がアルバイト・パート採用を行う企業を対象に「最低賃金の引き上げに関する実態調査」を実施した。その結果、最低賃金の引き上げについて賛成か反対かを尋ねたところ「反対」が66.2%、「賛成」が33.8%だった。経営に影響があると回答した約6割の企業を対象に、どのような対策をするか尋ねると、「サービス価格の見直し、値上げをする」(52.3%)が最多となり、次いで「非正規の残業・シフトを削減する」(38.5%)、「採用を抑制する」(35.4%)となった。

労働者の環境改善はもちろん重要な要素だが、特に中小企業にとっては負担が大きいのも事実。今後も最低賃金の引き上げは避けられないため、運送事業者も長期的な経営戦略を練る必要があると言える。