【質問】運送会社が行政処分や是正勧告を受けた指摘事項の中で、実務上、意外と間違いやすいポイントがあれば教えてください。

 

臨検や行政監査で運送会社がよく指摘される指導内容はどの会社もほぼ類似しており、大抵は残業時間や拘束時間、休息期間など労働時間に関する事項、割増賃金未払いや最低賃金割れなど賃金に関する事項、または年休の未取得や賃金台帳の未記入などに関する事項です。

しかし、中には指摘を受けてはじめて「そうだったのか」と気付く会社があります。最近発生した事例の中から、意外と間違いやすいポイントについて列記してみます。

①残業単価を算出する計算の分母に使う「月間所定労働時間数」に、各月ごとに異なる労働時間数(例:労働日数21日の月は168時間、22日の月は176時間など)を使用し、年間平均の月間所定労働時間数(例:2080時間/年÷12=173・3→173時間/月)を使用していなかったケース。

各月の所定労働時間数が異なる場合は、法令で年平均の月間所定労働時間数(例:173時間)を用いて残業計算をする定めになっており、異なる計算で残業代に不足が生じた月は訴求精算を指導されることがあります。

②短時間労働のドライバーに健康診断を受診させていなかったケース。

通常、正社員の労働時間の4分の3未満の短時間勤務を行う場合、法定の健康診断を受診させる義務がありませんが、ドライバーの場合は、平成30年3月の改正通達により、過去1年間に健康診断を受診していない者を乗務させてはならず、労働時間数に関わらず健康診断の受診義務があります。

短時間ドライバーの管理において、労働法の規定と行政処分の基準が異なる点に十分気を付ける必要があります。

③連続運転時間の計算が、運転離脱時間を30分間取得した時点で一旦、リセットされてから、その時点から再び連続運転時間のカウントが始まることに気が付かなかったケース。

「運転4時間につき、30分間の運転離脱時間が必要」の意味を「途中に30分間の離脱時間があれば4時間は連続運転可能」と解釈した結果、指摘された会社があります。

例えば、運転開始3時間後の時点で30分間の運転離脱時間を与えた場合、その時点で連続運転の計算はリセットされ、新たなカウントが始まるのですが、それに続く1時間が前の4時間の中に含まれる時間と解釈し、その後5時間連続走行して改善基準違反となった事例があります。

 

(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)