信号機のない横断歩道で横断しようとしている歩行者がいるときに、御社のドライバーは一時停止していますか?この問いに首をかしげる運送経営者は少なくない。一般車も含めて約7割が止まらない現状だが、プロドライバーから模範を示すべきとの声も聞かれる。

 

JAF(日本自動車連盟)はこのほど、8月11日から同30日に実施した「信号機のない横断歩道」での歩行者優先についての実態調査の結果を公開した。

 

同調査は各都道府県2か所、全国合計94か所で、信号機が設置されていない横断歩道を通過するすべての車両8281台を対象に実施。歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は2534台(30.6%)で、過去最高を記録した。JAFでは、「前年比で9.3ポイント増加し、毎年増加しているが、いまだに約7割のクルマが止まらない」としている。

 

交通ルールでは、「横断歩道における歩行者優先」が定められている。車両が横断歩道を通過する際、横断しようとする歩行者がいる場合には、横断歩道の直前で一時停止し、通行を妨げてはならない。また、横断しようとする歩行者がいないことが明らかな場合を除き、横断歩道の手前で停止できるよう、予め速度を落とすこともドライバーの責務となっている。

 

ディ・クリエイトの上西一美氏(JAPPA理事長)は、「警察庁の報告によると、日本の交通事故数や死亡重傷者数は年々減少しているものの、歩行中の歩行者の事故が依然として高い割合を占め、歩行者関連事故の件数は世界先進主要国の中で日本が最も多い」と指摘。その事故の相手は「車両」で、さらに現場は横断歩道上で起きているという。

 

「もちろん車両だけでなく、歩行者に原因があるものも少なくないが、歩行者の死亡事故を起こした車両の法令違反では、『横断中の歩行者進路妨害違反』『交差点安全進行義務違反』『前方不注意』『安全不確認違反』が90%も占めている」。

 

同氏は自身のセミナーで、「横断歩道の近くで歩行者がいたら、それは『赤信号が点灯している』ということ」と説明。また、「前方に信号がない横断歩道がある警告の◇マークがおおむね50mと30m手前に設置されているが、このマークは、『黄色信号が点灯している』と管理者はドライバーに伝えてほしい」という。

 

上西氏は、「伝え方により意識が変わる。そして、それは行動を変えるので、ぜひ社内でもこのような言いまわしで浸透させてほしい」と語る。

 

 

 

多様な企業が賛同「RESPECT THE LAW38」

 

道交法第38条「歩行者優先」ー。

この法律を一人でも多くのドライバーが知り、守り、そして広めていけば「歩行者優先の社会がきっと実現する」との思いでキムラユニティー(名古屋市中区)の木村昭二氏と上西氏が立ち上げたプロジェクトが「RESPECT THE LAW38」だ。

 

掲げる理念は、歩行者優先を「します」「伝えます」「広めます」の3つ。また、「8つの行動目標」として具体的な行動指針も提示している。

①1つ目の◇マークを見たらアクセルオフ

②2つ目の◇マークを見たら減速

③横断歩道付近に歩行者がいたら一時停止

④歩行者がいるか・いないかわからないときは止まれる速度で進行

⑤横断歩道手前で車両を追い抜く時は一時停止

⑥歩行者とは距離を空けて進行

⑦後続車から追突されないように早めのブレーキ

⑧発進時は歩行者等、周囲確認の徹底

 

同プロジェクトでは、1社でも多くの賛同企業を集め、「歩行者を守る」活動を各社が実践するとともに、それを紹介し、輪を繋げていくことを目指して展開。現在、置田運輸(横浜市中区)や福岡ロジテック(福岡県粕屋郡)などのトラック運送事業者だけでなく、バス、タクシーや、損保会社など多様な企業も手を挙げている。

 

安全教育に注力していることで知られる久居運送(三重県津市)も同プロジェクトに賛同。同社の菅内章夫社長は、「三重県は止まらないドライバーが多いと聞いたこともあり、良い活動だと思い賛同した。幹部には参加したことを伝え、今後、ドライバーへの注意喚起をはかっていく」と語る。マイロジ(愛知県一宮市)の谷藤浩一氏は、「道交法38条については危険予知トレーニングなどの安全研修で説明しているが、プロジェクトに賛同していることで、『まわりが意識し始めているので自分も気を付けよう』という雰囲気を醸成し、全社的な動機付けに繋がれば」と語る。

 

上西氏は、「本プロジェクトへの賛同企業・団体は常時募集している。交通事故のない優しい社会の確立のため、力を貸して頂きたい」と呼び掛ける。

 

◎関連リンク→ RESPECT THE LAW38