運送業界で拡大 共感広がる寄付型自販機

交通事故で親を亡くした子どもたちを支援する「東海交通遺児を励ます会」(吉野雅山会長)が取り組む寄付型自動販売機の設置が、運送事業者を中心に広がっている。身近な自販機の利用を通じて誰もが募金活動に参加できるこの仕組みは、社会貢献と安全運転の意識啓発を同時に実現する取り組みとして注目を集めている。
■支援の理念
同会は、東海3県に在住する0歳から20歳までの交通遺児とその家庭に寄り添い、経済的・精神的な支援を行う団体。1969年の設立以来、「交通遺児を出さない社会」を理念に掲げ、就学支援や記念行事の開催など多様な支援を展開。同時に事故根絶の啓発活動にも取り組んできた。
25年4月末現在、支援対象は110人・79世帯に上る。維持・運営は公的資金に頼らず、すべて寄付やボランティアの協力によって支えられている。
寄付型自販機は、ダイドードリンコが設置・運営を担い、設置先企業が販売手数料の一部(1%~)を同会に寄付する仕組み。さらに、ダイドー社も売り上げの1%を上乗せして寄付に充てる。発案は、同会を長年支援してきたキムラユニティー(成瀬茂広社長、名古屋市中区)によるもので、「事故を減らすきっかけに」との思いから始まった。
■広がる設置の輪
キムラユニティーを皮切りに、運送事業者や愛知県トラック協会などへと自販機の設置が広がるなか、東山(青木均社長、同緑区)も岡崎市内の車庫に導入。青木社長は「私の知る交通遺児として育った子どもたち(OG・OB)は、励ます会の支えを受けたことで『社会に出て恩返しをしたい』と語ってくれた。お金で解決できることではないが、一助になれば」と話す。
会長の吉野氏は、運送業界に向けて「交通遺児の存在を『わが事』として受け止めてほしい」と呼びかける。寄付型自販機は、ドライバーに安全運転の意識を促す手段であり、「安全へのアプローチの一つとして活用してもらえたら」と期待を寄せ、支援をさらに充実させていきたい考えだ。
また、同会の事務局長を務める戸井美紀氏は、交通事故遺族の一人。講演活動を通じて「事故は必ず防げる。少しでも体調に不安があれば無理をしない、心に余裕を持ってハンドルを握ってほしい。子どもには何の罪もない」と訴えている。
◎関連リンク→ 公益財団法人東海交通遺児を励ます会