トラックドライバーの成り手不足の一因として挙がるのが若者の車離れだが、同じく車に関する職種で、慢性的な人材不足が指摘されているのが自動車整備士だ。

自動車の保有台数は漸増傾向にあるなかで、整備業界は人材不足が顕在化しており、特に自動車整備士を目指す若者が減少している。

今後、自動車技術の高度化による影響から、自動車整備士の需要はますます高まる一方だ。

自動車整備要員の有効求人倍率は、平成24年が1.45倍で令和3年が4.55倍と大幅に高くなっており、人材の需要が非常に高いことを表している。

そのようななか、近畿運輸局で自動車整備士の車座対話が行われた。

5人の整備士が仕事のやりがいや苦労などを話すなかで、「人員不足や〝お客様ファースト〟などが原因で長時間労働が改善されず、36協定にひっかかるくらいの残業を行っている」「車を診たにもかかわらず診断料が正しく支払われない時がある」という厳しい現状を吐露する場面もあった。

これは長時間労働傾向にあり、適正運賃が支払われていない企業が多い運送業と似た傾向があるということではないだろうか。

また、女性の整備士は「人の身体を診る医師に診察料を支払うことに抵抗がある人はほぼいないにもかかわらず、整備士が車を診断しても『診断料を払わないといけないの?』と言われることが少なくない。また、整備士は国家資格であることを知っている人が少なく、作業着の資格を表すワッペンを見て、お客様が初めて国家資格であることを知ることが多い」という意見を出した。

整備士が意欲を持って働く環境づくりのために何が必要か、という質問では「当社では、1か月の残業時間を数時間に削減するとともに、基本工賃を上げている。仕事場も清潔感を大事にしているので、社員が友人に職場を自慢することが増えた」などという意見が出された。

環境・待遇改善は、トラックドライバーの確保にも通じるのではないだろうか。

若者の車離れとは言われているものの、自動車整備学校の入学者数は平成24年の8669人と令和3年の8455人を比較すると、大幅に減少しているとは言えない。

トラックドライバーも、「なりたい」と思っている人のニーズを掘り起こせば、担い手は発掘できるはずだ。

業界の未来を担う人材、そして今いる人材の定着のために、行政は各種施策を講じているが、事業者も自社でできることを始めることで、業界に明るい兆しが見えるのではないだろうか。