3けた国道や県道など郊外に多いものの、物流の大動脈である一級国道の一部でも見られる〝大型車両が作ってしまった〟竹木トンネル。道路に覆いかぶさるように張り出した竹木を、通行する大型トラックなどが車体で削り取る。「特にラッピングカーや、新車に乗っているドライバーは切実」と岡山県の運送経営者。自分の車体だけでなく、場合によっては積み荷まで傷つけかねないのがキャリアカーで、竹木を避けようと中央線側に膨らめば、その行為を「あおり運転」と受け取られてしまうケースまで発生しているようだ。

 

 

「困るのは事故や渋滞で、う回しようと普段は使わない路線を走るとき。そんな道路に限って、あのトンネルが出てくる」と前出の経営者。行政に相談したこともあるらしいが「頻繁に通るわけではない道路の具体的な地点を聞かれても大まかにしかいえない。それでは難しいといわれると、もう面倒臭い」と苦笑い。

 

「葉っぱの塊に見えても、その中に太い枝が隠れていることもある」と、これまで何度もボディーを傷つけた経験を話す。「対向車がなければ中央寄りにはみ出して竹木を避けられるが、無理な場合は一旦停止。ただ、急にブレーキを踏めば後続車両に追突される可能性もある」と心配は尽きない。

 

高さ3.8mの大型トラックが抱える悩みは、「木々が演出する緑のトンネル」を走る気分の乗用車ドライバーには理解しづらい問題。そのトンネルをさらにえぐる格好で走らなければならないのが、海コンやキャリアカーなど背高の車両。なかでも積み荷(自動車)がむき出しになるキャリアカーの場合は「もろに商品を傷つけてしまうことになる」(広島県の運送会社の幹部)。

 

同氏の会社でもこれまで何度も接触トラブルが発生しているようで、「荷物保険で対応するしかないが、なかには難しい問題に発展する例もある。道路管理者に申し入れても、なかなか動いてくれない」と吐露。また、昨年から取り締まりが厳格化しているあおり運転の問題が新たなストレスを生んでいる。「竹木を避けようと対向車線にはみ出したところ、『(蛇行運転で)あおられた』と前を走るドライバーからクレームが入るようになった」と厄介だ。

 

車庫でキャリアカーを整備していた男性ドライバー(50代=岡山県の運送会社)に話を聞くと、「この仕事は約5年。ウイング車に乗っていたときは手積みが嫌だったが、いまは竹木が一番の悩み」という。上下階で5台の乗用車が積める大型に乗っており、「常に道路の左側に納車地がくるようなルートで回りたいが、左に竹木がせり出した地点があれば、遠回りになっても配送順を見直す」とのことで、初めて走る道路の様子なども含めてドライバー間で情報を共有しているという。

 

現場の苦労はそれだけにとどまらず、「まずは1階に積んだ乗用車から順に届け、下が空けば2階の車両を降ろして竹木と接触しないようにしている」と同ドライバー。運行途上で安全かつ、適当な場所を見つけて作業するというから大変だ。竹木トンネルに遭遇する災難は都道府県が管理する道路に多いが、中には物流の大動脈となる一級国道でも同様の問題を抱えるケースがある。

 

岡山との県境に近い兵庫東部・赤穂市内に位置する国道2号のポイントもその一つで、取材したドライバーの多くが「できれば通りたくない」と口をそろえる。片側1車線の区間で路肩が狭く、道路の両側から竹木がせり出す地形。「梅雨の時期は湿気を含んで垂れ下がりも大きく、折れた竹で車体を大きく傷つけたドライバーもいる」と広島ナンバーの男性ドライバー。トレーラのキャリアカーに乗っていた岡山ナンバーのドライバーによれば「あそこを避けるために山陽道(備前~龍野西IC間)を使っている」という。勤める会社に確認すると「片道で2000円ほどかかるが、商品を傷つけるリスクを考えれば仕方がない」(社長)と複雑な思いを明かした。