国交省による「宅配の再配達の削減に向けた受け取り方法の多様化の促進等に関する検討会」の報告書(2017年)によると、宅配便の全体の取扱個数のうち約2割が再配達となっており、この約2割にのぼる再配達を労働力に換算すると、年間約9万人のドライバーの労働力に相当し、再配達による社会的損失は大きいとして問題となった。そのため、宅配ボックスや置き配などが検討され、取り組まれるようになったが、再配達は大きく削減できていない。

国交省が実施した令和3年4月の宅配便再配達実態調査によると、宅配便の再配達率は約11.2%(前年同月比2.7%ポイント増)だった。全国一律の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言発出による外出自粛要請等の影響があった前年同月と比べ、在宅時間が減少したことなどが影響したと考えられ、再配達は増加した。

この様に、なかなか減らない再配達を削減するためには、置き配の浸透がカギだと考えられる。

だが、置き配は、盗難や破損などの恐れがあり、その不安からなかなか浸透されずにいるのが現状だ。東京都では昨年、3月中旬から5月上旬までの間に、置き配を狙った窃盗事件が相次ぎ、置き配による窃盗のリスクが現実となった。

化粧品や健康食品の製造・販売を行っているファンケル(島田和幸社長、神奈川県横浜市)では1997年から、「置き場所指定お届け」を取り入れており、「玄関前」「ガスメーターボックス」「集合ポスト」「物置」「車庫」「宅配ボックス」など、注文者が指定した場所に荷物を置いている。

同社の置き配サービス利用率は、サービス開始時から30%で推移しており、紛失や盗難などは殆ど発生していない。仮に発生した場合は、同社の責任として商品を再発送することになっている。

また、「置き配の利用促進を図る上で、HPのご利用ガイドやメルマガなどでの紹介や、電話からのご注文時にご案内をするなど、置き配の利便性について認知拡大を図っている」とし、「今後は日本郵便の置き配サービスの1つである『OKIPPA(オキッパ)』の導入を検討するなど、置き場所の選択肢を増やし、さらなる『受け取り易さ』を提供していく」としている あらかじめ指定した場所に非対面で荷物を届ける「置き配」に対応している日本郵便(衣川和秀社長、東京都千代田区)では6月28日、置き配の荷物が盗まれたときに、保険金を支払う「置き配保険」を導入すると発表。利用者の荷物が盗まれた時に商品の購入代金を補償するサービスで、盗難による不安を解消する。
同社の「置き配保険」は、「置き配」を指定すると自動的に保険が適用され、盗難1件当たりの支払いは最大1万円となっている。

再配達削減に効果がある「置き配」を普及していくためにも、利用者の不安を無くさなければならない。日本郵便の様に置き配補償の充実が求められる。加えて、置き配で起こりうるトラブルを未然に防ぐことも「置き配」の普及には必要となる。

置き配で起こりうるトラブルと防止対策について、永代共同法律事務所の小野弁護士は、「荷送人や受取人(個人など)が置き配を了承している場合、置き配完了後の『盗難・紛失・汚損』について法的な観点から考えると、合意に基づく引渡し方法に沿って引渡しを完了していることになるので、基本的な責任は、受取人が負うことになる」としながらも、「『置き配を了承しているのだから何もリスクがない』と判断することは、やや安易だ」という。

「法令上、『運送人は受取から引渡しまでの間に運送品が滅失、損傷等した場合、受取・運送・保管・引渡しについて注意を怠らなかったことを証明しない限り、損害を賠償する責任を負う』(商法第575条)とされており、明らかに引渡しに適切でない状態(天候状況等含む)であるにもかかわらず置き配を実施した場合などは、運送人が注意を怠ったと評価される可能性があるので、一定の注意は必要」だとしている。