東京港コンテナターミナル周辺の渋滞は、昔のように6時間、8時間、10時間はざらにあるという状況からは改善されてきた。だが、陸上コンテナ輸送を行う運送事業者からは「以前に比べ待機時間が減って、3、4時間で済んだから良いということにはならない」と、継続して待機問題の改善を求めている。

東京港の交通混雑の要因として挙げられているのが、「施設容量の不足」と「夕方に貨物を引き取る車両が集中する傾向」だといわれている。「施設容量の不足」は、東京港の外貿コンテナ貨物取扱量が施設容量を大きく超えた状態が続いているにもかかわらず、市街地に隣接しているために、ふ頭を拡張することができないことが原因となっている。

また、「夕方に貨物を引き取る車両が集中する傾向」については、荷主から輸入品を午前中に納品するように指示されるケースが多く、要望に対応するため」としている。

東京港埠頭 GPS位置情報活用で混雑状況を「見える化」

東京港における外貿埠頭の整備、貸付及び管理・運営などを行っている東京港埠頭(服部浩社長、東京都江東区)では7月、全国で初めて、トラック事業者がコンテナターミナルに入場するまでに要した待機時間等を、トラックに搭載された専用GPS 端末の位置情報を活用してリアルタイムで公表し、ふ頭周辺の混雑状況を「見える化」する取り組みを開始した。

同社は「東京港ポータルサイトで各ターミナルの映像を見ることはできるが、実際にどれくらい待機しているのか調べる必要がある」と考え、「ふ頭周辺の混雑状況を『見える化』することで、トラック事業者の配送計画に寄与できるのではないか」としている。

また、「2019年のふ頭周辺における平均の渋滞長は、外貿コンテナ取扱量が400万TEUをはじめて突破した11年比で約7割減少しているといった情報も発信していかなければならない」として、取組状況やデータの見える化にも取り組んでいきたいとしている。

コンテナふ頭周辺道路における混雑状況の「見える化」の取り組みでは、東京港を出入りするトラックが現在、1日当たり約1万台であることから、統計学的に全体の13%である約1300台から1500台を目標に専用GPS端末をトラック事業者に配って、計測エリアに進入してからターミナルのIN ゲートを通過するまでの平均所要時間等のデータを蓄積していくこととなる。

同社は「現段階では、集めたデータを待機時間問題の解消にどのようにつなげるのか何も決まっていないが、『見える化』の取り組みをはじめたばかりなので、まずはデータの蓄積を進め、どのような改善策をとっていくか検討していきたい」としている。

この「見える化」の取り組みが、渋滞並びに待機時間の問題を解決するための糸口になることが期待されるが、現場で活躍する陸上コンテナ輸送事業者は、この問題についてどのように考えているのか。渋滞の原因や解決策、今回の「見える化」の取り組みについて聞いてみた。

日本コンテナ輸送 効率改善には標準化「見合った対価も必要」

年間およそ30万個のコンテナを輸送している日本コンテナ輸送(宮治豊社長、東京都品川区)では、「渋滞に関しては、昔に比べて混雑していない時もある」としながらも、「改善されてきたから良くなったかといえばそうではなく、おそらくコロナの影響で取扱量が一時的に減っているからだ」と考えている。

「東京港の場合は、それぞれのターミナルでやり方が違っていて、それぞれのやり方にあわせてコンテナ輸送事業者が対応しなければならない。それが全て標準化されれば効率は良くなる。また、ヤードのオープン時間の延長や本船荷役との優先順位が混雑解消に寄与すると思われるがコンテナ輸送事業者ではどうすることもできない」

「トラック事業者は運ぶ荷物の重量と距離に応じて運賃を収受しており、この利益がドライバーの確保につながる。そのために、待ち時間や渋滞問題の解決は必要だが、対応してもらえるのであれば、すぐに取り組める対策として、待ち時間や効率に見合った対価を得るというもので、こちらの取り組みも並行して行っていきたい」としている。

山鈴運輸 トラックの作業後回し「このままでは続かない」

東京港の陸上コンテナ輸送を行っている山鈴運輸(千葉県千葉市)の宍倉茂宗社長は「実際にドレーをしている会社からすると今でも待機時間がかかっている状況だが、ドライバーの労働時間がアウトになるので、できる限り並ばないようにしている」とし、「組めないことを見越して配車をしているのが現状」だと話している。

「効率良くコンテナを運ばなければ、ドライバーや会社の利益にならないため、できれば空いている時間に仕事を入れたいが、本船荷役が優先され、トラックへの作業が後回しになるなど、トラック事業者の方でコントロールできないことが多い」として、「このままのやり方では、将来的には続かない」としている。

実際に、東京港ターミナル付近の渋滞問題を改善するためには、それぞれのターミナルで微妙に違う仕組みを、ある程度平準化することと、東京港全体でソフト面やハード面の対策を立てて実行していく必要がある。五大港の一つ名古屋港では「集中管理ゲートによる渋滞解消の取り組み」が行われており、名古屋港管理組合によると「渋滞は解消されている」と、集中管理ゲートの効果が出ている。東京港においても、コンテナふ頭周辺道路における混雑状況の「見える化」の取り組みを機に関係者が一緒になって、全体で対策を行っていくことが、渋滞並びに待機時間解消のカギになると思われる。

ドライバーの声 低い期待感

トラックドライバー情報サイト「ブルル」が、海コンドライバーに今回の「見える化システム」について聞くと、「待ち時間の過去最高は16時間。最近だと青海で7時間。見える化しても、何も変わらないと思う」「大金をかけて携帯メールの呼び出しシステムを作ったのに、バグだらけで修正される前に頓挫し、今ではゴミと化していると聞いている」「以前に見える化と似たシステムを始めたが数日で稼働しなくなった過去がある。本船荷役が集中すると、外来荷役は後回しになってしまう」など、期待感が低い意見が多かった。

また、他港を走るドライバーからは「博多港の台風明けはかなり酷い。台風の日は港がクローズし、2日分まとまってくるので、ものすごく並ぶ。最近はコロナの影響で結構ガラガラだが」「名古屋港は昔に比べたら並びは少ない」など状況は様々なよう。