伊藤忠商事はこのほど、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所とともに、2024年度中のフィジカルインターネット(PI)の事業化に向け、共同検討することについて合意し、覚書を締結した。業界を横断したパートナー5社で物流改革を推進し、「物流2024年問題」の解決を含む持続可能な物流の実現を目指していく。

 

伊藤忠商事ではPIを、「荷物や倉庫、車両の空き情報などをデジタル技術で可視化し、業種を超えた複数企業の倉庫やトラックを相互接続させたネットワークで、発着点間で最適な輸送ルートを導き出し物流効率を高める、新しい共同配送の仕組み」と定義。パケット単位で効率的な情報の送受信を実現しているインターネットの考え方を物流に適用している。

 

出典:経済産業省 フィジカルインターネット実現会議

 

同社海運・物資課で上級コンサルタントを務める長谷川真一氏は、「我々は2019年からPIに関して検討を始めており、2020年には収益性のあるビジネスになると判断し、準備を進めてきた」と切り出す。

 

同社が想定するPIのビジネスモデルについて、「相互接続とオープンな拠点」をキーワードに挙げる同氏。「それを実現している代表例がエアライン(航空路線)」とし、「当社は、『マッチングサイト』ではなく、飛行機の座席予約の考え方をモデルとした『ブッキングサイト』を構築していく」と語る。

 

具体的には、「ある配送先に対して、何時に出る便がどこにあって、そのトラックの空きスペースがどれくらいで、食品なら食品同士だとか、制約条件まで加味して空きを予約するイメージ」と説明。「荷物と車両がマッチする手前までの環境は既に作り込んでいる」という。

 

同氏は、「求荷・求車のプラットフォームを提供するのではなく、我々自身が物流業者となり、当社が輸送リソースを仕入れてリスクを負って行うビジネスモデル」と説明。「荷主の注文を我々が受託し、手を上げてくださる物流会社のアセットを組み合わせて差配していく。空荷になる可能性もあるが、その場合でも対価は支払う」と付け加える。

 

「どんな航空貨物会社さんが『空港』に入ってきてもきちんと物が流れていき、その企業間で運賃も按分され、情報も共有される。これがエアラインモデル」と持論を展開する長谷川氏。5社は今後、「2024年度中のPIサービスの事業化を視野に入れ、新会社設立に向けた具体的な協議を進めていく」としている。

 

なお、伊藤忠商事は事業企画・推進と新規営業を、KDDIはサービス監視と通信環境整備、貨物のモニタリング、豊田自動織機はPIに最適化されたマテハン導入・整備、三井不動産と三菱地所はPIに最適化された中継倉庫拠点の構築を、それぞれ担当する。

 

◎関連リンク→ 伊藤忠商事株式会社