運行管理者試験が令和3年度第1回(8月7日から9月5日)から、CBT試験に完全移行することになった。新型コロナウイルスの影響で、前回の試験は筆記試験とCBT試験の併用で行われ、合格率が43.9%と例年と比べて高かった。デジタル化によって、試験に変化はあるのか。また、その変化に対応していくために準備すべきことはあるのだろうか。

「CBT方式による試験」とは、コンピュータを利用して実施する試験方式で、パソコン画面に出題された設問に対して、マウスを使って解答する試験で、筆記試験に比べて、回答作業が簡単になる。

この方式を導入した背景は、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策にともなう、試験会場の増加及びそれにともなう試験監督員の増員に係る経費など、試験実施経費の削減及び受験者の利便性を高めるため」としている。

前回の筆記試験との併用時には、CBT方式による試験の電子申請の方法について、運行管理者試験センター(永井正夫会長、東京都港区)へ電話の問い合わせが多く入ったが、大きな混乱は生じなかった。

筆記とCBTの併用試験について、運行管理者試験センターは「基本的に筆記試験とCBT試験の試験結果の差はほとんど無く、総括的にどちらも同じくらいの正答率だった」とし、「引っ掛け問題だといわれるような紛らわしい表現はできるだけ無くし、試験問題で格差が無いように、出題の仕方を基本的に同じように心がけて作った」としている。

「令和3年度第1回試験からはCBT方式のみの試験となるが、これまでの筆記試験と違って、試験会場は入れ替え制となるため、ほぼ試験を行う時間だけの滞在となり、持ち物の持ち込みができないため、試験前の見直しなどができなくなる」という。

また、CBT試験は、パソコンのある街中の試験センターで行われ、筆記試験の会場の様に駐車場が十分にないため、車で試験を受けに来る場合、受験者が自身で駐車場を確保しなければならなくなる。前回の筆記試験との併用試験の際に、一番多かった問題が駐車場だった。

令和3年度第1回試験は7月14日まで申請を受け付けているが、受験を確定するためには注意が必要となる。申請後、審査が通った人は、希望する受験会場と日時を選んで、受験手数料を支払ってはじめて受験確定となる。システム上、確定するまでに、不備があれば受験できなくなる。

「CBT試験を行う会場はパソコンのある試験センターで行うため、運行管理者の試験だけをやっているわけではない。簿記とか英検などほかのパソコンを使う試験も同時に行われている場合があり、運行管理者試験では使わない本や、テンキーを使っていることもある」と話す。

それから、「CBT試験」への全面移行にともなって今後は、試験問題を持って帰ることができなくなるほか、試験問題などの開示もされなくなる。希望者に受験者の得点と平均点が表示された試験レポート(有料)のみの開示となる。

この様に、いよいよ試験もデジタル化されて、変化しているわけだが、試験準備にも変化がみられるのだろうか。

自動車教習所向けのITソリューションの開発・販売を行っているノイマン(岩田昌之社長、東京都港区)では、運行管理者試験の合格を目指す人のためにeラーニングシステム「Kojiro運管(貨物)」を開発し、2019年12月にリリースしている。

運行管理者試験の貨物分野に合格した人の学習方法を徹底的に研究して開発された「Kojiro運管(貨物)」はリリース以来、これまでに3回の運行管理者試験(貨物)で、試験対策として受験者に使われており、利用者の7割が合格(同社アンケート調べ)している。

運行管理者試験のCBT試験への全面移行について、岩田社長は「当社のシステムは、自動車事故対策機構のテキストを基に状況にあわせて最新のテキストをつくっている」とした上で、「『基本用語問題』『基本事項についての問題』『応用問題』の3つのステージを設け、ドリル形式で覚えていく方法をとっており、スマホでどこでも空いた時間に勉強することができる」としている。

一方、運送業コンサルティング並びに運行管理者試験WING塾を行っているWINGジャパン(山田信孝代表、同江戸川区)も、これまでのリアル形式の講座を行うとともに、運行管理者試験「オンライン講座」も開講し、デジタル化への対応を行っている。

山田代表は「デジタル化も進めているが、これまで以上に、リアル形式の講座も増やしていく」としており、「仕事をしながら受験する人が多く、それぞれものになる勉強の仕方があると思うので、オンラインやユーチューブではしっかりと覚えられないという人のためにも、あえてリアル形式の講座に力を入れていきたい」という。