交通事故防止コンサルタントの上西一美です。まず、はじめに、今回の能登半島における震災に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。私も阪神淡路大震災で家と親族を失い、地震が起こる度に、他人事ではないという思いと当時の記憶が蘇ってきます。

地震翌日には、羽田空港で航空機事故が発生し、まさに激動の年始となりました。特に空港での事故は、人間の思い込みによるミスから発生した典型的な事故のようです。

管制官は「まさか滑走路に進入しているはずがない」と思い込み、海上保安庁の機長は「ナンバーワン」という言葉を離陸しても良いと思い込み、そしてJAL機の機長は、「滑走路に別の飛行機が進入していないだろう」と思い込み、この3者の思い込みが偶然重なり、あの事故が発生したのだと思います。

思い込みは人間の過去の経験と知識から作られます。交通事故の中でも、この思い込みによる事故は非常に多く、ドライブレコーダーの映像でもよく目にします。中でも、人が道路に寝ている路上横臥(おうが)は、この時期に注意しないといけない代表的な思い込みによる事故ではないでしょうか。
ドライブレコーダーの映像では、人が寝ているのは相当前から見えることが多いのですが、ある運転者は、「人が見えてもゴミだと思った」と証言していました。

過去の経験上、「人が寝ていることはないが、ゴミならあり得る」という脳を持っていたということになります。特にベテランになればなるほど、この傾向は強くなり、自らの経験が全てだと思い込むのでしょう。
これを防ぐためにどうすれば良いのかというと、「過去の経験と知識に頼らず一つひとつ確実に確認する」ことです。しかし、これは非常に難しいと言えるでしょう。

であれば、「ドライブレコーダーの映像をたくさん見る」ことです。映像を見ることは一つの疑似体験で、経験となり、思い込みをなくしていきます。
今年もたくさんのドライブレコーダーによるセミナーやコンテンツを展開していきますが、1件でも見て疑似体験を増やし、そして想定を増やすことで、このような思い込みの事故を防止いただきたいと思います。