今年4月にキリングループロジスティクス社長に就任した安藤弘之氏。安藤社長は、同社の社長就任で、4月末に中国・上海から帰国。すぐに同社の各地域の現場に足を運んだ。現場を第一に考える同社長ならではのフットワークの軽さに、周囲も驚いたという。そんな同社長は、プライベートでは少年野球チームの総監督を務めるなど、子どもたちや地域の交流をはじめ、人との関わりを大切にしており、自社に入社してくる新人にも、夢を持って世のため人のために働くことの重要性を訴えている。

同社長は1991年にキリンビールに入社。すぐにキリンビジネスシステムという情報システム系のグループ企業に出向し、営業をしつつSEとしてキャリアをスタートした。

「大学の専攻は法学。プログラミングを専門で学んだわけではないので、毎日のように深夜までコンピュータ言語を勉強し、習得した」と当時を振り返る。

同社長は酒類を販売する酒店が音声で飲食店から注文を受ける自動音声応答システムやCVSの販売管理システムの開発に携わった。
その後、キリンビール九州地区本部に異動となり、7年間過ごすが、それまで情報システム会社で働いていたこともあり、独自の商品の呼び方や単位など、キリンビールカルチャーをわからず苦労したという。

一方でこの時、ローカル地域で放送されるCMは、各地で制作していたため、ローカル限定商品開発やCMづくりに携わったことも印象に残っているという。その後の広域量販向け営業部門では販促やプロモーション立案を担い、地区本部と連携し、商品の拡販を12年間行った。
日本での勤務の後、中国・上海に渡り、中国事業の経営に携わった。中国にいた5年間では日本との文化の違いや、海外の物流に触れ、日本の課題とともに日本の強みを再確認できたという。

そして今年、キリングループロジスティクスの社長に就任したが、同社長にとって、ロジスティクスは初めての分野で、経験することが新鮮だという。2024年問題やドライバー不足という課題を感じてはいるが、同時に物流は、「奥が深い」「新しい物流時代にはチャンスも多い」とも感じているという。

「2024年問題に秘策はない」と同社長はいう。「DX化による業務効率化や、業務時間が減っても品質を維持できるように、そして労働環境の改善に愚直に取り組んでいくしかない」とし、「ドライバーの働きやすい環境にフォーカスしていき、その環境をつくれる会社経営を行う必要がある」と断言する。働きやすい環境であれば、自社や協力会社で、ドライバー不足も解消されると考える。

一方、共同輸送についても、全体的に意識が変わってきていると感じている。現在、ビール・飲料類での競合他社との共同物流の取り組みとして首都圏エリアでの小口配送、北海道(道東エリア)や北陸エリアでのJRコンテナを活用した共同の輸配送に取り組んでいるが、「競合他社も同じ課題と目標があるので、お互いに知恵を出し合い地域拡大を目指していきたい」という。

同社長は、量販店などの販促に携わった経験から、「自社の商品だけを並べても仕方がない。各社の売れ筋を持ち寄って、お客さんがわくわくするような売り場を作ることが大切」との信条を持ち、この考え方は物流にも生かせるという。「共同輸送などスモールサクセスを積み上げていき、それを物流課題解決に生かしていくことが大切」だと説く。

また、働きやすい、働きたいと思える環境にも注力しており、その一環として同社では、KGLの未来を思い描くワークショップの参加者を社内で公募した。これは、2050年に世界や日本の物流、KGLがどうなるかを自由に考えてもらおうという企画だ。

「決められた目標を達成するだけではなく、自分の仕事が世の中にどう影響しているのか、社会の課題解決につながっているのか、そういう意義を感じないとモチベーションが続かないと思っている」とし、まさにキリングループで取り組んでいるCSV経営を推し進める取り組みだ。

「仕事への情熱を引き出すには、チャレンジングな目標設定も必要」とし、「自己成長や組織への貢献を求めることも必要。厳しくて温かい会社を目指す」と話す同社長は具体的に、「お客様を一番に考える会社になること、私たちのお客様は『物流に関わる全ての人』になり、そして、従業員がKGLで働くことや『キリン品質』の物流サービスに誇りを持てる会社を目指していく」と締めくくった。

◎関連リンク→ キリングループロジスティクス株式会社