私が運送業の経営コンサルティングを始めたのは1987年ですので、今年で36年目になります。過去に訪問した会社は3千社を超えており、中小零細企業から上場企業まで規模も業態(貨物の種類、長距離、地場等)も様々です。

お会いする相手は主に経営者や役員等の幹部社員が多いのですが、時々現場の所長や班長、トラックドライバー等と話をすることがあります。運送会社と長年付き合いをしてきた中で、実際に見聞きしたトラックドライバーのあるある話を列記したいと思います。


①「家庭内が不仲なドライバーは労働時間が長くなりがち」

実際に相談を受けた事例ですが、あるドライバーが配偶者と不仲なため、家庭内に居場所がなく、日頃から「家に帰れない」と言っていました。

そのドライバーは自宅に帰らず毎晩ネットカフェで寝ているため、毎朝、出社時刻が異常に早く、帰庫時刻(事務所に戻る時刻)が極めて遅い傾向がありました。拘束時間が基準を超過するため、困った会社側から相談を 受けたものです。長労働時間の原因が待機時間等ではなく、家庭内の不仲にあった事例です。


②「休日出勤して洗車をする社員には理由がある」

これも実際に相談を受けた事例です。トラックドライバーは洗車が大事な業務の一つですが、通常は運行終了後に行うことが多いです。

しかし休日のたびに出勤して洗車する社員がいました。平日に洗車をしているので休日出勤の必要がないため、会社が本人に理由を聞くと「家にいても何もすることが無いから」「洗車が趣味なので」との回答でした。
車両に対する愛着が強く、いつも綺麗な車に乗務したいとの想いもあるのかもしれません。


③「釣りやツーリング(バイク)が趣味のドライバーが多い」

これは地方の運送会社でよく聞く話です。トラックドライバーは長距離運行などトラック内において一人で過ごす時間が長く、運転中にも安全運転に神経を使うため、休日にはリフレッシュして自然と触れ合う機会を好む傾向があります。

休日には趣味の釣りやツーリングをしている人が多くいます。特に四国や九州の運送会社には実際に釣りクラブが社内にある会社もあり、大変盛んです。


④「車両の乗り換えを嫌がるトラックドライバーが多い」

トラック運送業は一車一人制(ドライバーごとに担当車両を決める制度)が大半であり、通常は乗務する車両が決まっています。

しかし会社としては車両の効率を上げる為、仕事に応じて別の車両にも乗務して欲しいと考えています。その際、慣れていない車両に乗務することを拒否するドライバーが時々います。
理由は「いつもと運転感覚が異なる」「運転しにくい」「タバコの臭いがする」などです。

一方、今後は2024年問題対策で中継輸送が広がる傾向があり、車両の乗り換えが増えるものと見込まれます。


⑤「運送会社にはさまざまな個性の強いトラックドライバーがいる」

今まで訪問した会社には個性の強いトラックドライバーも多くいました。
その一部を列記すると、

㋐スビート遵守の意識が徹底しており、一般道で決して時速45キロを超えない高齢ドライバーがいて、毎日荷主から延着クレームが入っても決して自らの運行ルールを変えない人がいました。

㋑キャビン内を自分好みの装飾に変えるドライバーがいて、派手なカーテンやぬいぐるみ、枕、睡眠グッズ、飼い犬の写真などを車内に持ち込み、まるで自宅の部屋のようになっていたドライバーがいました。

㋒会社が高速道路の利用を奨励しても、決して高速を使わず下道だけを走るドライバーがいました。理由は「自分のルールに則って仕事をしたい。休憩場所を決めているので高速道路は使いたくない」とのことでした。