はじめに

運送会社が役員・社員に大型運転免許を取得させるために、取得に必要な教習所の費用等を会社で負担した場合の税務上の取り扱いはどのようになるのかをお伝えします。

所得税関係

パソコンの画面を見る上司と部下(所得税関係の事務処理のイメージ)

運送会社において役員・社員に大型運転免許を取得させることが「業務遂行上必要なものである場合」には、給与として所得税を課税しないこととされています。 この場合における「業務遂行上必要なものである場合」とは、その役員・社員が大型運転免許を取得していないと仕事にならない場合を指します。 そのため、事務員にサービス向上のために大型免許を取得させた場合は、確かに大型免許を取得させればサービス向上につながるかもしれませんが、事務員としての仕事が出来ないわけではないので、これは「業務遂行上必要なものである場合」には該当しません。 トラックの運転をする必要のない役員・社員が大型運転免許を取得した場合にその取得費用を会社が負担した場合には、給与として所得税を課税されることになります。 取得費用が給与として所得税が課税された場合には、源泉所得税が課税され免許取得費用分を上乗せした源泉所得税を納める必要が有ります。 また、普通運転免許の取得費用は基本的には普通に生活するうえで取得するものであるため、その取得費用は役員や社員が負担すべきものとされているため、法人で支払った場合は給与を支払ったものとされますが、「業務遂行上必要なものである」と認められた場合には給与とされないと思われます。 免許を取得するためにかかった交通費も免許取得費用と同様の扱いになるため、その免許取得が「業務遂行上必要なものである」と認められなかった場合は交通費についても役員や社員に対する給与となります。

法人税関係

運送業者のトラックの前で腕組みして微笑む男性(運送業の法人税イメージ)

運送会社において役員・社員に大型運転免許を取得させることが「業務遂行上必要なものである場合」には、その取得費用は法人税法上費用として認められます。 ただし、「業務遂行上必要なものである場合」と認められない場合は、その取得費用が役員に対するものであるときは、取得費用の金額に相当する役員賞与をその役員に支払ったとされ、事前にその旨の届け出(事前確定届出)をしていない場合は取得費用全額が法人税法上の費用とは認められません。 また、その取得費用が社員に対するものである場合には、上記の通り社員に対する給与を支払ったことになるため、法人税法上は費用になります。

消費税関係

ハンドルを握るトラックドライバーの写真

免許の取得費用のうち、自動車教習所の費用は仕入税額控除の対象となりますが、運転免許センターで運転免許の交付費用は行政費用になりますので仕入税額控除の対象となりません。 ただし、業務遂行上必要なものであると認められない場合は、その取得費用は給与扱いになるため取得費用の全額が仕入税額控除の対象とならないことになります。

さいごに

以上が、運送会社が役員・社員に大型運転免許を取得させるための費用等を会社で負担した場合の税務上の取り扱いになります。 ポイントになるのは、その役員社員の運転免許の取得が仕事をするうえで必須かどうかにより税務上の取り扱いが変わることになりますので、その辺を考慮に入れて取得費用を誰が負担するかの判断をして下さい。 ただし、社員に免許取得費用を負担させる場合は、社員に運転免許の取得を強制することは出来ないと思われますので注意が必要です。

著者紹介

一般社団法人運輸安全総研トラバス監事
森田範文税理士事務所・代表 森田 範文氏

森田 範文(もりた のりふみ)

一般社団法人運輸安全総研トラバス監事
森田範文税理士事務所・代表
東京都内の税理士事務所勤務を経て、独自の方法で中小企業の支援がしたいと思い独立開業。運送会社の置かれた状況は値下げ競争など依然として大変厳しい状況にあるため、会社の財務状態を正しく管理し改善をすることにより会社を守ることが出来ると考えております。また、毎年のように税制改正が行われ、かつ、複雑になっていますが、専門用語はできるだけ使わずに分かりやすく説明することをモットーとしております。