運送業は他業種に比べてドライバーの離職率が高く、半年以内に離職する人の割合が高い傾向があります。しかし、運送会社の中にも離職率の低い会社があり、そのような会社には共通点が見られます。以下に離職率の低い会社が共通して行っていることを挙げてみます。




同業他社より高い賃金と選べる報酬体系、及び充実した福利厚生

離職率の低い会社は地域の同業他社の賃金相場を調査し、同業他社より月例賃金の平均額を約2万円程度高い水準に設定しています。

賃金が他社より1万円高いと募集時に選択される確率が高まり、2万円高いと応募が集中する傾向が見られます。高い報酬は離職の防止にも影響します。

また、業界未経験者には安定型の固定給体系、ドライバー経験者で稼ぎたい人には業績給中心の体系と報酬体系を選択できる仕組みを導入しています。


さらに、福利厚生の充実化に注力しており、特に住宅関連の補助を行っています。家族手当ではなく、家賃や住宅ローンの補助に力を入れる理由は、家族手当では共働き世帯の配偶者に支給されず、また独身者には無縁の手当となるため、全員が共通して補助される住宅関連費用に着目しています。その背景には家族手当が最低賃金の計算に入らず、住宅手当は最低賃金の計算に含まれるという雇用管理面での経営的利点もあります。


他の福利厚生では法定外健康診断(SAS検査や脳ドック等)など健康管理の強力に注力しており、また病気やけがで働けなくなった時の保障制度なども整備しています。

社員が安心して働ける環境を整えることで定着を促進しています。


ワークライフバランスを意識した取り組み

最近は若年層を中心に仕事とプライベートの時間をバランスよく調整し、個人の生活を楽しみながら働きたいという要望が高まっています。入社時の面接でも賃金よりも先ず休日について聞く人が増えてきました。離職率の低い会社は、

・柔軟な労働時間の設定

・希望に沿った勤務シフト

・事前に休暇計画を提出してもらい連続休暇が取れる仕組み

・会社都合での突然の休日出勤命令を行わない

などの取組を行っています。人手が足りない運送会社にはいずれの取組も高いハードルになりますが、社内で協議をしながら「休みがとりやすい職場づくり」に取り組んでいます。




働きやすい労働環境

長時間労働や重量物の手積み手卸し、または炎天下(又は暑い倉庫内)での荷役作業など過酷な労働環境が続くと、どのようなドライバーでも長続きしません。離職率の低い会社は労働環境の整備に積極的に取り組んでおり、運転しやすい車両、適切な休憩施設の整備や休憩時間の確保、手積みから機械積みへの切替え、余裕のある運行計画など、ドライバーが健康で安心して働ける職場づくりに取り組んでいます。

いずれの取組内容も運送会社単体では決められず、荷主や元請企業との話し合いが必要になりますが、離職率の低い会社は経営者が社員の為に積極的に荷主と交渉を行っています。


研修の充実化とキャリア支援体制

離職率の低い会社は、社員が将来に向けて成長を実感できる研修や、キャリア支援体制を構築しています。筆者が知る、ある運送業経営者は「社員の教育にはいくら金をかけてもよい。社員だけがうちの財産だ」と言っています。そこの社員は会うたびにたくましく成長しており、会社を誇りに思って働いていることが分かります




社員の声を聞くコミュニケーションの良い職場

上司と部下のコミュニケーションが良い職場は離職する人が少ない傾向があります。社員の意見を聞いて、答えてあげる姿勢が管理職に徹底されている会社は定着率が高まります。