ドライバーの時間外労働に罰則付き上限が設けられる2024年4月を目前に控え、今後ドライバーの年収はどのように推移するかを考察してみたいと思います。

運送業はドライバー人材の不足が常態化しており、2024年問題を契機に人材不足が一層進むことが確実と見られています。NX総研は2024年以降トラックドライバーが14万人不足すると試算しており、鉄道貨物協会は2028年には28万人不足すると試算しています。
このような試算をもとに運送業のみならず荷主企業においても「今後車両の確保が困難になるのでは」と危機感が高まっています。今まで「運送会社の代わりはいくらでもいる」と豪語してきた一部の荷主も「本当に物流が滞る可能性もあるのでは」と不安視するようになりました。




そのような時期に、昨年末、運賃交渉の話し合いに前向きではないと申告された荷主13社の社名が公正取引委員会により公表されました。また年明けには価格転嫁に非協力的と名指しされた企業150社の社名が公表されました。
従来、荷主等の社名が公表されたことはほとんどなく、画期的な出来事でした。最近になって荷主側に厳しい措置が出始めたのです。価格転嫁を強力に後押しする政府の姿勢が明らかとなり、荷主企業に緊張感が走りました。

また国土交通省の告示による「標準的な運賃」の制度も現状の時限措置(2024.3月まで)からさらに延長される可能性が高まり、今後運賃・料金の見直しが一気に進む機運になってきました。
つい最近も宅配便の価格改定が打ち出されましたが、大幅値上げに対し消費者の反応は概ね「仕方がない」と理解を示す空気であり、反対する声はあまり聞かれません。

昨年末から年明けにかけて、運送業を取り巻く環境に明らかな変化が生じています。燃料や車両、および人件費のコストアップ分が運賃に転嫁できれば、ドライバーの賃金に好影響を与える可能性が高まります。価格転嫁が順調に進めばドライバーの賃金はこれから2~3年で確実にあがっていくでしょう。概ね7%程度(月額2~3万円)の賃金上昇は見込まれます。
特に大型免許やけん引免許を保有するドライバーの価値が高まり、賃金相場が急速に上がる可能性が有ります。賃上げの動きは先ずは東名阪の都市部から始まり、地方へも波及していくでしょう。




令和3年度賃金構造基本統計調査によると全産業平均年収489万円に対し、大型ドライバーが463万円、中小型ドライバーが431万円であり、規模別平均額は446万円となっています。現状、ドライバーの平均年収は全産業平均より1割程度低い状況ですが、前述した理由により、2024年以降徐々に全産業平均と同水準に近づくでしょう。

ドライバー人材の確保が想定以上に厳しくなると、全産業平均を超えてさらに賃金が上昇する可能性もあります。自動運転の技術が大きく進展し、将来トラックドライバーが不要になる時代が来るまでその状態が続くものと思われます。

賃上げする体力がない運送会社にはドライバーが集まらなくなり、体力のある中堅以上の運送会社に集約される動きが進むでしょう。運送業のM&Aは一層進展するものと予想されます。労働条件の良い会社にドライバーが定着するようになり、営業力とシステム対応力に優れた会社に人材の集中化が進むでしょう。
但し、以上の予想は2024年の法改正が厳格に運用され、かつ価格転嫁分の原資が賃金に回される場合に限られます。仮に罰則付き法規制の施行後も行政監査等で許される会社が出てきて違法状態の会社が生き延びることがあれば、前述したような賃金上昇は望めないでしょう。

2024年の法改正が正しく運用され、トラックドライバーの価値が一層高まることを期待したいと思います。