【質問】弊社にはトラックの貨物運送部門の他に、バスの旅客部門があります。現在、旅客部門はコロナの影響を受けて稼働が止まっており、この機に今後に向けた体制整備を行いたいと考えています。旅客部門の賃金体系の一般的なポイントを教えてください。

 

運送会社の中には、トラックとともにバスやタクシーを所有して、貨物と旅客の両部門を兼業している会社が一定数存在します。

弊社の関与先にも専業の会社と貨物旅客兼業の会社が混在しています。トラック運転手の賃金体系は、主に車種や取扱貨物、運行エリア、走行距離、労働時間帯、労働時間の長さ、荷役作業の内容や頻度等の違いにより、時給・日給・月給制に分かれ、賃金の計算方法も固定給から歩合給まで、多様な体系が見られます。

一方、旅客運送の場合は、会社による相違は多少見られるものの、タクシー部門はほぼ歩合給が主体の賃金体系であり、バス部門は日給月給制の固定給と歩合給との混合体系が一般的です。ご質問のバス部門の賃金体系に関しては、基本給(日給月給制)を最低賃金以上に設定し、歩合給には距離歩合と運行歩合を組み合わせている会社が多く見られます。

距離歩合の距離単価は1㌔当たり3円から5円程度に設定する会社が多く、平均走行距離の違いにより、1㌔当たり10円程度までの範囲で決定しています。固定給対歩合給の比率は6:4程度に設定する会社が多く見られ、貨物に比べると固定給の割合が高く、比較的安定的な賃金体系です。

運行歩合は車格と運行回数により計算する仕組みで、大型バスとマイクロバスでは1運行の設定単価に差を設けています。バスの運転職とトラックの運転職の賃金決定における最も大きな相違点は、バスの乗務員の場合は接客態度が極めて重要な要素になることです。顧客との接し方だけではなく、顧客の前でバスの添乗員と言い争い、露骨に不快な態度をとることなども許されません。これらの行為を防止するためには、適正な勤務評価を行って、賃金や人事処遇に反映する仕組みが必要です。

トラックの運転職には無事故手当や報奨金等で安全意識の向上を図りますが、バスの乗務員には無事故手当や報奨金等の他に、接客態度等の勤務評価を欠いてはいけません。評価結果は半年先の賞与に反映するだけでは効果が半減し、日常の行動変化に結び付きません。月々の賃金に反映する仕組みが意識向上には効果的です。

その手段として評価制度の導入と評価手当の新設が必要になります。賃金体系の整備と評価表の見直しは同時に行いましょう。

 

(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)