飲酒の機会が増えるシーズンになってきたが、自動車を運転する立場としては深酒や、いわゆる残酒にも気をつけたいところだ。仮に、運行途上で業務(拘束)から解放された時間帯であったとしても、トラックドライバーであるからには節度ある行動が求められる。荷主や元請けの物流施設に置かれたゴミ箱にビール、酎ハイなどの空き缶を捨てたドライバーの行為が原因となり、運送会社が出入りを禁じられたという例が現在も見られる。ドライバーが休憩するためのトラックステーション(TS)も以前から、そうした非常識に悩まされてきた場所の一つだ。

■一夜で満杯

ピーク時から思えば施設数は大幅に減ったものの、いまもトラックドライバーらが休憩や食事で訪れるTS。現在は全国23か所に設置されており、その一つである岡山TS(岡山市中区)は国道2号に面した使い勝手のいい立地。広大な岡山県トラックターミナル(遠藤俊夫社長、同)の構内の一角に設置された格好のため連日、全国から多くのトラックが出入りしている。

 

同TSの管理・運営を全ト協から委託されているのが同トラックターミナル。トラックの駐車場の後方には高さ80cm、幅65cmほどの円柱形の空き缶のゴミ箱が置かれており、毎朝、同ターミナルの職員が缶と瓶、ペットボトルを分別して回収。ほかに弁当ガラなどのゴミ箱もあるという。

 

「一晩でいっぱいになる。酒類はビールや酎ハイの空き缶が多いが、たまに日本酒の4合瓶などが放り込まれていることもある」と村上浩常務。悪質な場合、監視カメラで会社名などがわかれば注意することもあるというが、「一般の利用もあるうえ、拘束時間から解放されているドライバーもいる。また、(ターミナル内にある事業所の)内勤の従業員が捨てるケースも見られる」と同常務。

 

「荷下ろしに来た運送会社のドライバーがビニール袋のような物を捨てる様子が防犯カメラに映っており、後で見ると酎ハイの空き缶。取引先に『二度と来させないでくれ』と連絡した」と述懐するのは同県倉敷市のトラック経営者。軽率な行動が、場合によっては自分の勤務する会社から仕事を奪うことも肝に銘じておきたい。

 

■家庭ゴミも

一方、高速道路のサービスエリアや本線上でポイ捨てが後を絶たない尿入りのペットボトルも、TS内のゴミ箱や建物の陰に不法投棄され、それらの処理も職員の仕事。こうしたゴミは特に夏場に増えるというが、ビールのせいだとすれば笑えない話。中身が見えないスクリューキャップ式のアルミ缶に尿を入れたものまであるようだ。

同ターミナルの現業職で、ゴミ回収業者に引き渡す直前までの作業を担う岡﨑三郎さんは「32年間ずっと大型」という元トラックドライバー。「けさ(10月27日)はビール系と酎ハイの空き缶が20本あった」というが、1日の量としては少ないほうらしい。さらに驚いたのは「9月に日本酒のワンカップ34本が捨てられていたことがあった」という衝撃の実態。監視カメラで「犯人の見当はついている」と話す。

 

ただ、TSの管理を委託された立場として、どこまで対応すべきかといった問題もある。岡﨑さんも、酒類ゴミを捨てたのが「ドライバーとは限らない。野菜の切れ端と、決まった銘柄の発泡酒の空き缶が入ったビニール袋がある」と、家庭ゴミを持ち込む“常習犯”も存在する様子。

 

「ゴミ箱を撤去すれば済むことなのかもしれないが、散乱すれば周囲の迷惑になる」と村上常務。構内のあちこちにポスターを掲げて啓発するものの、委託事業である以上は全ト協の指示に従うことになる。その全ト協では「いろいろと啓発を工夫し、それをTSでもPRしており、減少するように引き続き取り組んでいく」(施設事業部)としている。