運転者の労働条件や労働環境を評価・認証する「運転者職場環境良好度認証制度(働きやすい職場認証制度)」の認証実施団体の日本海事協会はこのほど、合格事業者2548社を発表した。内訳は、トラックが1718社、バス172社、タクシー658社。

申請総数は2558社で、トラック1726社、バス172社、タクシー660社だった。「想定の倍以上の申請をいただき、当初の予想よりも関心が高いことがうかがえた」と話すのは、同協会交通物流部の成瀬健主管(写真左)。「コロナ禍ということもあり、1000社を目標にしていたが、好調な滑り出しとなった。認証を受け付ける我々も全力で臨んだ」と嬉しい悲鳴をあげる。

「申請されているのは大企業だけでなく、中小規模の企業も少なくない」とし「認定推進機関の各社が周知・広報活動に注力されたことも、功を奏したのでは」とも。

高田徳生氏(同右)は、「当認証は運転者のより良い労働環境の整備を目的としている。法令順守は取得の要件だが、就業規則の内容を審査するのではなく、きちんと届け出がなされているかを確認するものなので、まずは気軽に申請いただきたい」と呼びかける。

4月からは、TBSラジオ「ドライバーズ・リクエスト」(全国33局ネット)で20秒のスポットCMの放送を開始。「リスナーから当協会に『どの企業が認証を取得しているのか。取得している企業に就職したい』という問い合わせもいただいた」と目を細める。「ドライバーはもとより、その家族や一般の方々、将来ドライバー職を目指す若者にも幅広く精度の周知につながれば」。
今年度の申請期間は7月21日から9月21日の予定で、「一つ星」のみの実施が決定している。「当初の計画にあった『二つ星』『三つ星』については、早急に実施するよりも、『星』の在り方自体を検討するとともに、優良事例などの情報収集に努め、皆様の取り組みをきちんと確認した上で、制度拡充を目指す」という。

成瀬氏は、「助成金制度を設けられているトラック協会さんも増えている。ぜひ活用し、申請いただきたい」と語る。

グローアップ社会保険労務士法人 岡本氏「課題に向き合うきっかけに」

グローアップ社会保険労務士法人(東京都港区)の岡本重信氏は、「極めて基本的なことが求められている制度。働き方改革などの影響で、今後、より運送業界の人材獲得競争が激しくなるのは間違いなく、『一つ星』も取得していないと、不利になることは確実と言える。新規採用や既存従業員の定着のため、ぜひ取得してほしい」と語る。「国交省もPRに注力していくはずなので、荷主や一般社会でも認知が広がっていけば、より重要性が増してくるはず」と付け加える。

また、「認証取得ももちろん重要だが、申請に向けて体制をチェックしていくことで、自社の弱みやできていないことが明確になり、課題に向き合うきっかけになることも意義が大きい」と指摘。「経営者や管理者の方が『当社はできているのかどうか』と考え、最新の法規制を調べたり勉強したりすることで、正しい労務管理の知識が身に付き、法令改正に対応した会社に成長できる」と付け加える。

岡本氏は、「今年は申請できそうにないという運送事業者さんも、来年、再来年もチャンスはあるので、それに向けて取り組みをいまから始めてほしい」と語る。

アピールできるよう活用 「一つ星」取得の茨城乳配

「一つ星」を取得した茨城乳配(茨城県水戸市)の植田啓史部長は、「申請するにあたって、社内の状況・環境を改めて知ることができ、改善活動にも役立てられた」と語る。

「ISO39001、Gマーク、グリーン経営と各認証を取得しているが、それらと比べるとスムーズに準備が進んだ」と振り返る同部長。「認証項目にチェックを入れての自己採点などはとてもやり易かった。分かりづらい点は事務局に問い合わせると詳しく教えてもらえたので、頭を悩ませることは少なかった」という。

ただ、「電子申請を行ったが、各資料への番号の割り振りや営業所名の記載後のアップロードが思いのほか面倒だった」とも。

「現在行っている活動やコンプライアンスの遵守状況が認証取得のカギ」と指摘する同部長。「今後はHPなどで公表し、優良な職場環境の企業であることを求職者や社員の家族、荷主、取引先にアピールできるよう活用していきたい」と語る。

◎関連リンク→ 働きやすい職場認証制度(運転者職場環境良好度認証制度)