日本最大の航空貨物取扱量を誇る成田国際空港では、荷待ちするトラックの待機時間が深刻だ。実際に現場を取材すると、業界の中でもとりわけ拘束時間が長いという航空貨物輸送の実態が浮き彫りとなった。

時間外労働の上限規制が適用される2024年4月まで2年を切る中、労働時間の短縮という大きな経営課題を抱えている物流業界。荷主や物流事業者、そして行政など、成田空港の物流に関わるすべての人が、深刻化する待機時間の改善に、本腰を入れて取り組む必要がある。

成田空港での荷待ちの現状について、天浪地区トラック待機場で待機するドライバーに話を聞いた。

取材を行った月曜日は、週末に貨物が溜まるため、現場が最も忙しく、さらに雨天で作業が滞るという悪条件が重なる日となった。

荷待ちの現状について、待機場にいたドライバーは、「順番が来たと言われて積み場に行っても荷物が揃っていないことはよくある。時間がかかるのは仕方ないと諦めて、寝て待つほかない」と吐露する。

別のドライバーは、「問題は積み込みのタイミングが合わないこと」と指摘。「搬出のタイミングに合わせてすぐに積み込みができれば良いが、現実はそうもいかない」とし、「後回しになった貨物はその場のスペースを占領し、次の貨物が搬出できずに作業が滞る」。

こうしたドライバーの声を裏付けるため、航空貨物を取扱う事業者にも取材した。

長距離メインで空港間配送を行う運送事業者は、貨物の許可予定時間に合わせて動いているが、予定通りに貨物を積めることはほとんどないという。

担当者は、「昔と比べてマシにはなったが、依然として待機時間は長い。ドライバーも感覚が麻痺しており、長時間待機が常態化している」と話す。

一方、同じく航空貨物を扱う運送事業者によると、「保税上屋によって貨物搬出後の対応が異なり、待機時間にも差が生じる」という。

貨物搬出後にトラックへの積み込みが始まるが、「積み込みを保税上屋のフォークマンが行うのか運送会社が行うのかということで大きな違いが発生する」のだという。

同事業者は、「一部の上屋では搬出から積み込みまで上屋が行うので車両を拘束してしまい、貨物の受け渡しまでにかなりの時間を要している」とし、「保税上屋がすべてを担うため、効率が悪くなり、荷待ち時間が長くなっている」という現状を指摘、その上で、「運送会社のフォークマンが積み込みする方が、正直言って効率もよく、時間も早い」とこぼす。

「どこの上屋も自助努力はしていると思うが、システムや航空貨物の性質上、改善が難しく、長年状況は変わっていないのが実情」だと話している。

一方、声をあげ続け、一部の保税上屋から要望を通した会社も存在する。

同社が要求した内容は、待機時間の見込みがつかない場合はそのまま待ち続けるのではなく、朝積みに切り替えるというもの。

「監査が入って処分を受けるのはこっち。待機理由を書いても法律で許されるかと言えばそれはまた別の話」とし、「自助努力をしなければいけないのは必然で、その結果、ドライバーを帰らせて朝積ませるのが正当なのではないかと考えた」と説明する。

「着荷主は、本当に早い時間に必要なのか、配達してからその場に放置されていないか」。同社は、こうした疑問を一つ一つ検証していった。すると、ほとんどの依頼元が早朝厳守ではないことがわかったという。

「歩み寄りのない会社とは付き合いをやめていくという強い決意を持って臨んだ」とし、「午後6時以降の通関許可の貨物はやらない、そう代理店に根付かせていく」と同社担当者は語気を強める。

しかし、朝積みの交渉が成功した一方で、それに付随する問題も。朝積みは自己都合と見なされるため、高速料金を請求できておらず、現状は高速代を持ち出しで行っているという。

今後同社では、高速代の請求に関し検討していくと同時に、積み込み作業者、自社倉庫に横持ちする専門班を作ることなどを視野に、少しずつ改善を進めていくとしている。

 

 

こうした待機時間が長くなる現状について、荷主となる保税上屋はどう考え、どう対応しているのか。

「まず、外国人作業員の増加や業務量の増加の中、フォークリフトや牽引車両などの運転スキルの高い人材が不足していることが前提としてある」と保税上屋の担当者は話す。

また、ドライバーが指摘したように、同担当者も、待機が長くなる原因について、貨物搬出の受付後のスムーズな受け渡しが出来ないことを挙げた。

さらに貨物の混雑状況の改善については、「貨物の引き取り時間帯や輸出貨物の搬入時間が重なる午後6時以降はトラックが著しく集中する」とした上で、「成田空港内の貨物上屋施設を増築しない限り、状況の改善は難しいと感じている」と限界を口にする。

現場の声を聴く限り、問題が複雑に絡みあって、解決の糸口がなかなか見つからないというのが実情。

しかし一方で、上屋施設の拡張や朝積みへの移行、そしてトラック予約システムの導入など、改善すべき点も見えてきている。

2024年を間近に控えた今、空港の物流に関わる全ての人たちが、改善に本腰を入れる必要があるのではないだろうか。