三菱食品(東京都文京区)はこのほど、トラックの空きスペースを活用したシェアリングサービス「trucXing(トラクシング)」の提供を開始した。同社物流DX推進オフィスで室長を務める白石豊氏(写真左)は、「いわゆる求荷求車のマッチングサービスのようなスポットの案件ではなく、ある程度まとまったロット数の定期便での利用を想定している」と説明する。

 

同社では、納品業務で1日当たり約7600台のトラックを稼働。同室長は、「荷物の小口化や多頻度納品などの進展で空きスペースが一部で生じており、積載率向上は大きな課題だった」と切り出す。「帰り荷に困っている協力会社さんは少なくないと聞いていた。当社は輸配送データを蓄積・活用することで、積載率向上と車両効率の最適化に向けた取り組みを進めており、トラックの余積スペースのシェアリングができればと考えた」と語る。

 

同サービスでは、同社が荷主と運送事業者の間に入り、調整を行う。荷主・運送事業者それぞれと同社が契約を交わし、ニーズのヒアリングから条件交渉、契約行為、運用開始後のトラブル対応、運賃決済までを担う。

 

 

荷主と運送事業者が直接のやり取りをしない仕組みは、同社がこだわったポイントの1つだという。同オフィスの山田智文室長代行(同右)は、「じかに交渉すると、なかなか成立しづらかったり、お互いに一見さんが相手の取引に不安を感じられることもある。日頃から取引のある当社が間に入ることで、安心・安全を提供できるのでは」と説明する。

 

運送事業者は企業情報や車格、発着エリア、運行状況などを登録するが、登録料や月額料などはかからない。利用料金は一律ではなく案件ごとに同社が設定するという。

 

「通常、登録から2ー3営業日で当社の担当スタッフが連絡し、ヒアリングなどを行う」とし、「条件に合う案件があれば、1週間前から前日までに提案する」という。「登録してからどのくらいの期間でシェアリングが成立するかはケースバイケース。フィットすればすぐに決まることもあるが、何か月も決まらなかった案件が突然決まることもある」とも。現在は関東発着便を中心に、東北、中部、関西地方にも広げており、今後は全国展開していくという。

 

 

昨年度からパレット単位の納品業務を利用運送の形態で代行する「余積シェアリング」として、関東圏でスモールスタートしていた同サービス。本格稼働にあたり、「トラック輸送を現在進行形でトランスフォーム」したいとの思いを込めて、トラック輸送を意味する「trucking」とトランスフォーメーションの「X」を掛け合わせた造語の「trucXing」に名称を変更した。

 

「当サービスが『マッチング』ではなく『シェアリング』と表現しているのは、限られた車両台数の中で、空いてしまっている隙間を有効活用したいという思いから。いまある車両の積載率を上げていくことが目的」と強調する両氏。「当社とこれまで取引のない運送会社さんでも、もちろんご利用いただける。気軽に登録いただければ」と呼びかけている。