2024年問題に対応するため、高速道路では「深夜割引の見直し」に加えて、「最高速度の引き上げ」についての検討が始まった。どちらもその根底にあるのは、長時間労働が慢性化しているトラックドライバーの労働環境の改善だが、そのために安全が軽視され、別の部分で負担がかかるようなことがあっては本末転倒、取り組む意味が無い。高速道路で検討されている内容については賛否両論、運送事業者の関心が高まっている。

高速道路での大型トラックなどの速度規制の引き上げについて検討するため、警察庁は7月26日、「高速道路における車種別の最高速度の在り方に関する有識者検討会」の第1回を開催。年内をめどに提言を取りまとめる予定としている。

検討会では、「現在、80km毎時とされている高速自動車国道上の大型貨物自動車等の最高速度について、交通事故の発生状況のほか、車両の安全に係る新技術の普及状況などを確認した上で、引き上げる方向で調整する」として検討を進めている。

だが、検討するにあたって、「道路交通の安全確保の観点が重要」というのが大前提で、「高速道路一般に期待される安全レベルが維持できると認められるのなら、制限速度を引上げる余地があると言えるのではないか」との考えで検討が行われている。

 

警察庁では「速度規制の在り方については、今後、検討会において、様々な意見を踏まえて検討していくことになる」としており、「実際に利用するトラックドライバーや運送事業者の意見を踏まえて、速度規制の在り方について議論していく」という。

警察庁では今後、同検討会を4~5回程度開催し、高速道路における車種別の最高速度の在り方について論点整理の上、年内を目途に提言を取りまとめる予定で、第2回検討会では、運輸事業者関係と自動車メーカーにヒアリングを実施する。

 

■「絶対に事故が増える」「料金を安くする方が意味がある」

高速道路における最高速度見直しについて、取材やSNSなどを通じて事業者からは「労働時間を規制して健康や安全を守るといっているのに、速度をあげることでドライバーやまわりの車に危険が生じる可能性があることは考えないのだろうか」

「働ける時間が制限され、その分スピ―ドを上げて対応しなさいというのはおかしい」「絶対に事故が増える」「中小の運送会社はすべて高速道路を使えるわけではない。フルに使える大手の要望だけ聞いているのでは」といった意見が多く聴かれる。

この様に、高速道路の速度引き上げについては否定的な意見も多く、「速度を早くするよりも、高速道路料金を安くする方が2024年問題の対応としては意味がある」と、高速道路の深夜割引制度の見直しの方が現場の関心は高い。

深夜割引制度の見直しについては、国交省が2024年度中を目途に、深夜走行分のみ割引対象にするとともに割引適用時間を拡大すると発表。深夜割引適用待ちの車両の滞留問題や、それに伴うドライバーの労働環境の悪化を解決するとしている。

NEXCO東日本は「深夜割引は深夜に通行したその通行の部分について割り引くというのが本来の主旨なので、その本来の趣旨に近づけて新しい深夜割引を導入したいと考えているが、いくつか懸念があるとの指摘があるのも事実」と話している。

こうした見直しにも、事業者からは「事業者割として、深夜関係なく24時間どの時間でも割引が適用された方が良い。わざわざ深夜に走らなくて良くなるし、割引に時間をあわせなくて良くなるので、ドライバーの負担が無くなる」との意見がある。

「営業ナンバーを持っている運送会社全てが対象とは言わないが、例えば、優良事業所とうたっているGマークを持っていることが条件というように、事業者側にも割引対象となる資格を持たせるなどすれば、安全面でも効果があるのでは」とした。

この様な運送事業者の意見に対して、NEXCO東日本は「物流事業者のような、高速道路を大口・多頻度利用されるお客様に対しては、走行する時間帯によらず、月々の利用額に応じて割引する、大口・多頻度割引を実施している」と回答。

その上で、「24時間割引をすることや、新たな割引を行うことに関しては、新たな財源が必要となること、また、フェリーや鉄道などの他の輸送機関に与える影響が大きいことなどの課題があるため、慎重に検討する必要があると考えている」としている。