新電元工業(東京都千代田区)はこのほど、商用EVの60kW急速充電器「BC―Pro.モデル」の販売を開始した。2台同時充電や最大16時間の連続充電を実現した同製品は、大容量バッテリーを搭載したEVトラックを事業所内で充電する「基礎充電器」としての役割を担う。

EV充電器は、最大出力が3kW程度の「普通充電器」、同50kW前後の「急速充電器」に大別される。前者は充電速度が緩やかなものの回路がシンプルなため小型で、導入費用を低く抑えられるなどのメリットがあるという。

一方、後者は大型になるが、前者の10倍を超える速さで充電できることが魅力。同社販売促進課の神坂賢輔課長は、「国内で設置されている充電器は50kW以下のものが大半だが、当社では90kWを超える『大出力急速充電器』も含め幅広くラインアップしている」と語る。

同課長は、「家庭や自社の車庫で充電する『基礎充電』は、一般的に『普通充電器』を指すことが多いが、バッテリー容量の多いEVトラックやバスなどは、通常の『普通充電器』や『急速充電器』ではカテゴライズしづらく、どのような充電器を置くべきか迷われる事業者さんも少なくなかった」と指摘する。

今回、発売したモデルは60kWの急速充電器タイプで、「従来器では255分(4.5時間)で充電停止してしまう課題があったが、独自方式で最大16時間まで延長可能になった」。これにより、「200kWh以上の電池を搭載したEVトラックを2台同時に充電した場合でも、夜間のうちにフル充電させることが十分に可能」

2台同時充電の場合は均等に分け合うだけでなく、バッテリー残量などを加味し、7対3というように自動的に割り振り。「現場のドライバーさんが手動で配分を変更することもできる」

同製品は、「温度抑制」がないことも特徴。同課で主任を務める今井恭佑氏は、「最大16時間の充電と言っても、装置が高温になり出力が低下することがあっては元も子もない。当社製品は、長時間の利用や夏季など温度上昇しやすい条件でも、安定した充電出力を発揮できる」と胸を張る。

公共充電器のような決済サービスを利用しない「スタンドアロン」方式を採用。充電開始ボタンを押すだけで手軽に充電できる。不正利用を防ぐためのパスワード認証も可能。

「商用EV向けの製品も徐々に問い合わせが増えており、当製品もおかげさまで大きな反響をいただいている」と明かす同主任。運送事業者の運用方法については、「最大出力が6kWの『見せない普通充電器』との併用もお勧めしたい」と語る。

「どのようなEVトラック・充電器を導入するかはもちろんだが、充電器をどのようなレイアウトにするかということも非常に重要」と力説する神坂課長。今井氏も「給電ケーブルは『もっと長くしたい』との声もいただくが、長すぎるとタイヤで踏んでしまったり、収納に手間がかかるため、あえて短めを推奨している。ケーブルが短く、効率よく運用できるレイアウトも提案したい」と語る。

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