全国各地で、子ども食堂やフードパントリーなど、食を通した居場所づくり活動が広がっており、食支援ニーズが高まっている。一般社団法人全国食支援活動協力会(MOW、東京都世田谷区)が推進する「ミールズ・オン・ホイールズ ロジシステム(MOWLS)」では、33都道府県との連携により、約2000団体へ寄贈食品が届けられるようになったが、いずれの地域でも配送・保管が課題となっている。

 

企業からの食品の寄贈量が1億5000万円分と増加し、全国各地に寄贈物資をシェアできる拠点整備が必要となったため、コロナ禍でスタートしたMOWLS(モウルス)。このシステムは、企業からの物資をまとめて受け取り、MOWが調整して団体に届けるという仕組み。

 

 

このモウルスによって、3温度帯に対応した食品寄贈を受け入れるロジ拠点(一次受け拠点)を全国に50か所確保。活動団体が取りに行ける距離に設置したハブ拠点(ロジ拠点の支店)が全国で99か所となり、全国2000か所の支援団体へ届けられるようになった。

 

だが、MOW専務理事の平野覚治氏は「現状で、我々ができるのは、都道府県或いは政令指定都市くらいまでで、そこから先は地域ごとの物流の賛同者が出てこないとできない」として、全国の物流事業者にモウルスへの参加を呼び掛けている。

 

9月5日に東京で開催した「第2回物流支援プロジェクトシンポジウム」では、各地で広がる配送・保管支援の事例を連携団体と保管・物流支援事業者の視点から紹介するとともに、各エリアで分かれて意見交換が行われた。

 

モウルスの立ち上げ当初から参加している名豊興運(愛知県小牧市)の倉田直樹社長(写真)は「モウルスの活動自体は、全国で食の支援を求めている人に行き届く仕組みということだが、当社は地元密着なので、愛知県の所だけをやっている」と話す。

モウルスの課題は地域ごとの配送・保管以外にも、子供たちにたんぱく質を届けるために必要として需要が高まっている冷凍・冷蔵の食品を仕組みの中に取り入れることだが、供給の少ない冷凍・冷蔵の倉庫の確保は難しい。

 

MOWから、モウルスへの参加を呼びかけられた当時の名豊興運は、所有している冷蔵冷凍センターと、一部自由に動かせる車両があったことから、中核ロジ拠点の一つとして、アイスクリームの荷受け・保管や各ロジ・ハブ拠点への配送を行っている。

 

 

倉田社長は「当社が食支援活動に参加し、貢献できるのはとても嬉しいことだと思っているが、あくまでもボランティアなので、従業員に我々の会社はこんな良いことをやっているのだから、協力して当然だろうという考えはない」と話す。「2024年問題で労働時間の制約が厳しくなってくるので、食支援活動に賛同してくれる従業員と、われわれ管理者スタッフが手を取り合ってやっていくような形であれば、負担にならないとは思っているが、綺麗事だけではできない」。「モウルスの活動規模が大きくなって、従業員への負担がかかってきた時にどこまでやれるかということは今後の検討課題」としており、さらに「コストについても、完全ボランティアでコストゼロでは、自社で負担ができる体力のある会社でなければ参加できず、活動は広がっていかない」と考えているという。

 

これについては、第2回のシンポジウムの意見交換の中でも、物流事業者から「今後、労働時間とコストの問題が出てくる」という声が聞かれ、コストをどの様にしていくのかも課題になっている。

 

MOWの平野氏は、「ボランティア活動は、収益を上げる事業ではないが、各地域の自治体にコスト面での協力を求めるほか、物資を提供してくれる民間企業からは廃棄コスト分などで、物流事業者に少しずつ分配できる仕組みをつくっていく」としている。

「それまでは、ボランティアとして配送・保管ができる有志を募集し、多くの物流事業者に参加してもらうことで、各社の負担が軽くなり、無理のない社会貢献が可能になる」

 

倉田社長は、「従業員に強制はできないので、賛同してくれるメンバーで対応しているが、センターのスタッフはすごくやりがいを持ってくれている」とし、「こうした活動は無理をしても長続きしないので、できる範囲でやっていきたい」と話している。

 

◎関連リンク→ 一般社団法人全国食支援活動協力会