GBS(東京都中央区)は、ドイツに本社を置くGermanBionicが開発したパワースーツ 「Cray X」を日本企業へ提案している。「安全で健康な労働環境と生産性を同時に達成し、データで証明したい」と意気込むGBSの山下英夫社長に話を聞いた。

同製品は、リュックサックのように背負い、肩・腰・太ももの3点で支え、荷物の積み下ろしなどの作業時の負荷を最大28kg軽減するというもの。同社長は、「20kg以上のサポートがないと健康への有用性が確認できないという研究結果をもとに、改良を重ねた」と説明する。

バッテリーは40分の急速充電で最大8時間駆動。「昼休みに充電すれば午後からの作業も問題なく使える」。対象身長は155cmから195cmで、サイズはS・M・Lの3種類。

「導入企業の業種は多岐にわたるが、物流業務での利用が多い」とし、「出庫は自動化が確立されているが、入庫は手作業という現場も少なくない。当社の製品は、カゴ台車やパレットからコンベアへの移動を担当する方に活用いただいている」という。

ホームセンターや食品スーパーの物流センター運営を手がける共同物流サービス(青森県八戸市)では、同製品を複数台導入し、運用を開始している。同社の森山慶一社長は、「物流の現場には重労働の作業があり、 機械化や自動化を進めることが急務。生産性向上による顧客満足と労働環境の改善による従業員満足の両立を目指しており、 『Cray X』の導入で、こうした取り組みが加速できると考えている」と語る。

山下社長は、「導入企業では、女性従業員が全体の7割にのぼることもある」とし、「定年後や出産後など、潜在的な働き手の獲得といった採用活動にも役立てられるのでは」と付け加える。

同社長は、「当製品のユニークな点は、Wi―Fiを搭載し、データを収集できるコネクテッドであること」と強調。「歩数はもちろん、何kgを持ち上げたかといった詳細な利用状況を遠隔地のパソコンで把握できる」とし、「データを収集することで『気づき』につながる。フォークリフトとの併用を提案することもある」という。

また、「作業に合わない設定になっていないか、現場から遠い本社の社員が知るきっかけにもなる」とし、「作業者から『胸部が痛い』と報告を受け、本社でデータを解析し、ゆっくりかがむ動作に対応した設定に変更することで解決した事例もある」という。

「物流現場では、時間的なプレッシャーに追われ、重い荷物を継続的に素早くさばくことが求められがち」と指摘する山下社長。「腰痛は悪化すると最大28日間の欠勤につながるというデータもある。作業者の健康はもちろん、企業としての生産性向上のためにも、ソフトウェアの更新を定期的に行うなど、進化を続けていきたい」と語る。

 

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