各地でトラック協会によるイベントが予定される「トラックの日」。「暮らしと経済のライフライン」によってトラック輸送産業をPRしようというのであれば、今年は着ぐるみキャラクターによる〝集客イベント〟ではなく、ト協主催で「トラックによるストライキ」をやるほうが似つかわしい――。

 

ト協会員の運送事業者からそんな声が聞かれる。トラック乗務員の「2024年問題」を対岸の火事としてではなく、市民一人ひとりが持続可能性を肌身で感じる〝生涯教育〟に直結する、からだという。そして、トラック燃料に関する法的用語「暫定」「当分の間」という言葉の意味を政治家からみんなのもとに取り戻す今年の秋にするためにも、と。

「2024年問題」を乗り切るためとして政府が出した施策24項目(「物流革新に向けた政策パッケージ」)。トラック運賃面の引き上げ策(P3)で言えば、「働きかけ等を実施」「取引環境の適正化を強力に推進」「『送料無料』表示の見直しに取り組む」など、旧聞に属する文言が並ぶ。

 

荷主や倉庫などでの待機時間解消策(P2)にしても荷主等に「自主行動計画」を作らせ、待機等があった場合の「正当な対価収受を促進する」など民間任せの姿勢で、新味は行政による「勧告・命令」制度の導入というスパイス程度にすぎない。

 

また、そうした制度を導入しても新設の「トラックGメン」(P3)による能動的な調査はなく、トラック事業者からの密告があって初めて制度が動き出す仕組み(本紙8月10日号)に国交省自らがしてしまっている。取引上の立場を経営上失えないトラック事業者が、これまで密告という手段に出ることができなかったからこそ生じた「24年問題」の解消策の一つが、密告を前提としている――。何をか言わん、自家撞着的なコドモ騙しだ。

 

さて、「24年問題」が問題であるとして、その解への道を政治・行政主導によるパッケージ施策に身を委ねていていい、とみる運送経営者は驚くほど少ない。ある経営者は「ホワイト・ブラック企業」という〝第3の言葉〟を口にする。

 

「罰則があるからと乗務員の労働時間をホワイト化しようとすると、給与の原資である運賃がこれまでの時間単価ならば、必ず手取りが減る。ホワイト化しようとすると給与が低いゆえにブラック化する」。この先、罰則逃れのための方策を探り従来どおりのブラックでやっていくのがいいのか、それともホワイト化のための運賃向上を目指すのか。雲行き眺めのさなかにいる状態で判断がつきかねる、と話す。

 

別の経営者も基本的には同じような状況だ。そして、長距離トラックに典型な燃料高についても言及し、「赤字になってまでトラックを動かさなければならないのか」の問題が絡み合ってくる。

 

今月9日の「トラックの日」について経営者は、「暮らしと産業のライフラインがここまでひっ迫していることをアピールするため、『トラックの日』にはトラックによるゼネストをするほうが似つかわしいのでは。少なくとも、着ぐるみ人形で例年のように集客して喜んでいる中小運送会社の経営者は、いない」。パッケージ施策にせよ燃料高騰対策にせよ、いまの政治任せで持続可能性が確保できるとは到底考えられない、とも。

 

別の経営者もこれに呼応。「持続可能性とはなにか。燃料高や24年問題への無策に何も言わずにいるのが持続不可能性を一番高める手法。たった一日のゼネストなら教育効果がデメリットを上回る。そうした教育こそ、『トラックの日』イベントにふさわしい」。真顔で話した。