中小零細企業が9割を占める運送業界で、2024年問題や改正改善基準告示への対応は容易ではなく、現場では、なかなか改善が進まずに四苦八苦する事業者の姿が散見される。荷主あっての業務だけに、運送事業者個々での取り組みには限界がある。そのため、荷主や消費者の行動変容や意識改革などを促そうと、国をあげて取り組みが進められている。

来年4月から時間外労働の上限規制の適用や、休息時間の延長、拘束時間の短縮などが求められるようになるが、法を犯して営業したい運送事業者などいないはずで、「守りたくても守れない」というのが本音だ。だからこそ、取り巻く環境の改善を急がねばならない。

厚労省が2022年度の過労死等の労災補償状況をまとめ、公表した。それによると、脳・心臓疾患に関する事案の請求件数では、「運輸業、郵便業」が172件で最も多く、中でも「道路貨物運送業」が155件と最多。支給決定件数においても、道路貨物運送業が50件と最も多かった。残念ながら、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患による突然死などの労災において、運送業のワーストが続いているというのが実情である。

ドライバー不足が深刻化しているが、労働時間の長さや賃金の低さが原因とされる。こうした結果が業界イメージを落とす要因になってしまっていることも認識していかねばならない。幸いにして、いま、国をあげた労働時間短縮の動きが出ている。あらゆるところで値上げが発生しており、荷主へのアピールも含め、運賃交渉の流れも出始めており、「この機を逃す理由はない」と、千載一遇のチャンスと捉える声も出ている。

労働環境の改善を図り、労災事故を減らし、健全な業界へシフトしていく。それがいま、運送業界に求められていることであり、取り組んでいくべきことである。