i Labo(東京都中央区)は、水素社会の早期実現を目的に、既存のディーゼルトラックを水素エンジントラックに改造する「水素化コンバージョン技術」の開発を環境省から受託し進めている。来年4月には、水素燃料で走行する水素エンジン車で貨物を輸送し、安全性・実用性・経済性を確認する実証実験を行う予定だ。

 

同社の山根公高社長は50年前から水素エンジンを研究しており、およそ3年前に同社を設立。戦略企画本部長を務める小澤衛氏は、「70年代のオイルショックをきっかけに、エネルギー自給率の低さや化石燃料に頼っている状況を危惧し、水素エンジンの開発に着手した」と経緯を語る。

 

「水素化コンバージョン技術」のメリットについて、「初期費用を抑えられること」を挙げる同氏。「燃料電池トラックを新車で購入する場合は数千万円と言われているが、当社の技術で既存エンジンを水素化すれば、およそ4分の1以下に抑えられる」。

 

対象車両はメーカーや経年数を問わず、「あらゆるタイプを想定しているが、中型車以上がCO2削減効果を発揮しやすい」とし、「今後、10年以上乗るものをお勧めしている」という。

 

また、同社では、整備部門を持つ物流事業者や自動車整備事業者に対し、同技術のマニュアルや重要部品キットの提供、人材育成支援なども展開していく予定。「エンジンを載せ替える技術があれば、自社でコンバージョンいただける」。

 

「当社の『水素社会』のビジョンは、車両開発だけにとどまらない」と息を巻くのは財務本部長を務める太田修裕氏。「車両のコンバージョンに加え、トラックターミナル内に設置するBtoB型水素ステーションをセットで提案する」という。「既存の水素ステーションは街中にあり、乗用車向けが多い。現状では補助金があっても赤字になりがちだが、経済性の調査もあわせて行う」。

 

来年4月の実証実験では、実際に荷物を積んだ水素トラックと移動型の水素ステーションを使用する予定。両氏は、「大型の水素トラックの実用化は2030年頃と言われているが、指を咥えて待っているのではなく、カーボンニュートラルな社会の早期実現に向けて貢献していければ」と熱く語った。

 

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