帝国データバンク(後藤信夫代表、東京都港区)ではこのほど、利払いの負担を事業利益で賄えない「ゾンビ企業」の現状分析を発表し、2020年度は前年度比1割増の16.5万社と推計したことを発表。猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の対策や円安による原油原材料の高騰、ウクライナ情勢など影響が考えられる中、増え続ける「ゾンビ企業」は今後、どうなっていくのか。

「ゾンビ企業」とは、健全な経営状況ではないため、市場を退出すべきにも関わらず、銀行などから資金的な援助を受けることで市場に存続している企業のことを指す。

この言葉は、バブル崩壊後に企業の過剰債務と金融機関の不良債権問題が解決不能と思われるほど、重くのしかかった90年代後半に生まれたものだ。
帝国データバンクでは、2020年度に「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」の企業1万2037社について業種別に調査。

建設が構成比34.3%で最も多く、続いて製造(20.0%)、卸売(18.9%)、サービス(10.4%)と言う結果となり、運輸・通信が5.2%を記録した。

補助金や金利ゼロ政策などの緊急的な対応がゾンビ企業の増加の要因として考えられ、今回のコロナ融資で融資を受ける前から業績が悪化していた企業の延命につながったことも考えられる。

実際に同調査内でコロナ関連融資を「借りた・借りている」と回答した企業に対して、今後の返済を不安視しているかを聞くと、全体の52.6%が不安視していると回答し、ゾンビ企業に絞って割合を見ると、79.6%と8割近い割合を叩き出した。

 

コロナ融資を受けた大阪府の運送事業者のA社社長は、この不況に対し、「(会社が)潰れるのも時間の問題」と吐露した。A社社長は、「コロナ融資の返済が始まっているなか、純利益が回復しないことや融資を受ける前からの負債を抱えている現状にあるため、返済が正直きつい」と言う。

同調査でコロナ関連融資を「現在借りている」企業に対し、今後の返済見通しについて尋ねたところでは、「返済に不安」があると回答した企業は調査全体で9.0%だったが、ゾンビ企業に限った場合、15.5%と1割以上となった。

運輸企業がゾンビ企業になる原因を帝国データバンクに質問すると、「コロナ渦以前は後継者不在などの企業内事情などが挙げられたが、現在ではウクライナ情勢による原油高が一番の要因ではないか」とし、「今後、行き詰まる企業が表面化していく可能性があるが、どの業界でも同じことが言える」と述べた。

現在は新型コロナウイルス感染症の第7波が到来し、感染症法上の分類は2類相当とされているが、収束後は分類の見直しに向けた議論が期待される。季節性インフルエンザ並みの「5類」相当に緩和するべきという声が広がっており、医療ひっ迫を回避することが主な狙い。

こういった議題に上がるものの、感染症対策を始めとした情勢の影響は物流業界のみならず、幅広い業種に及ぶことが考えられ、それらの負担を軽減する金融支援が施されることからゾンビ企業の延命は当面続いていくと予測される。

しかし、物流業界の抱える問題は新型コロナウイルスだけでなく、従業員ドライバーの高齢化による退職や後継者不在など、倒産の理由になりえるのはコロナだけではない。じわじわと追い詰められ、倒産を余儀なくされる企業は多く、コロナ対策を含めた多くの対策が急務になってくる。