2016年度に創設された制度「健康経営優良法人」。トラック運送事業者の参加も年々増えており、最新データでは運輸業(旅客事業者含む)が1011件と、建設、製造業に次いで3番目に多い認定数となっている。

宇和島自動車運送(石田稔社長=写真右、愛媛県宇和島市)は、身近な課題の解決をきっかけに従業員の健康管理を組織的に取り組み始めた。同制度には初年度から継続して参加、認定されており、上位層の「ブライト500」にも2年連続で認められている。

野口実紗・人事担当課長代理(同左)は、健康への取り組みと制度参加の指揮を執ってきた一人。「四国中央支店にいた頃、事務作業でひどい肩こりを経験した。荷捌きや積み込みを行う同僚は腰痛持ちが多く、調べると社内で同じ悩みを抱える者が多いと分かった」と振り返る。

これがきっかけになり中心拠点2か所に、もみほぐしより整体に近いという「ローリングマッサージ」を導入。「マッサージ店や病院はまず選ぶのが大変。持ち運びできる専用ベッドを用意し、先生に2か月に1回来てもらい、社内で施術を受けられるようにした」(野口氏)。費用は会社が7割負担と受けやすい体制を整えた。コロナ禍で中止していたが再開も検討するほか、痛みの発生予防についても考えていきたいとしている。

従業員の平均年齢は44歳だが、幅広い年齢層の300人が西日本の10拠点で24時間働いている同社。石田社長は「食事は単身者だけ問題ではない。コンビニ頼りでなく、健康な食事を出したい」として社員食堂のメニューは栄養士の資格保持者が選定し、カロリーも表示する。このほか分煙、インフルエンザの予防接種、健診の再検査費用を1万円まで負担するなど必要に応じて取り組みを重ねている。

 

なお、ブライト500の条件でもある地域への発信活動でも野口氏が活躍する。県内の健康経営優良法人を中心に健康経営やSDGsを推進する「Well―being愛媛」のメンバーとして、会社の取り組みをYouTubeなどで紹介。「社内の事例は手近ですぐ始められるものが多い。今後はその情報発信にもっと力を入れたい」と野口氏。

石田社長は「運送業はまだ3Kのイメージがあるが、持続可能な会社であるには従業員の健康が必須。認定にあぐらをかかず、地に足を着けて手作りの取り組みを発信していきたい」と話している。

 

◎関連リンク→ 宇和島自動車運送株式会社