【採用・退職トラブル対応編】㊵

「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。

今回も前号に続き、「採用・退職時における留意事項」について運送業経営者が知っておくべき労働関連法の内容及び周辺知識について解説してまいります(その8)。

1.退職勧奨とは
⑴退職勧奨
解雇が認められるには相当なハードルがあるため、退職勧奨という方法で退職を促すことがあります。退職勧奨とは、企業が社員に対し「辞めてほしい」と伝え、退職を勧めることをいいます。退職勧奨は、社員の合意があって初めて退職(労働契約終了)となるもので、一方的な労働契約の解除を告げる解雇予告とは異なり、解雇の際に必要とされる「解雇予告」「解雇予告手当」も、必要ありません。

⑵退職勧奨を行う場合の留意事項
最大のポイントは「事実上の解雇」と受け取らないようにすることです。例えば、面談を行う理由は「今後のキャリアについて」などとし、本人が応じない場合には直ちに実施しない方がいいでしょう。一定の時間を要することを想定する必要があります。

退職勧奨は社員側に「拒否することができる」、という性質があることに留意する必要があります。退職の「強要」と受け取られると、「解雇」となり弁護士などの専門家が介入してきた場合には「不要解雇」として金銭補償を要求してくる可能性があることを想定しておく必要があります。

2.退職勧奨の必要性
中小運送業の現場では、「荷主に暴言をはいて出入り禁止になった」「事故を起こしたのに報告しなかった」「アルコールチェックに数度引っ掛かりドライバーとしての適性に問題がある」といった事案が発生しています。

それでも社員側が納得せずに弁護士などに委任した場合には「解雇」が認められるのが難しいのが実情であり、「退職勧奨」を検討していくこととなります。