【労務トラブル実事例編】⑱

「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。

今回も前号に続き運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。

1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
茨城県所在の運送会社A社(社員数70人)は車部品の配送や日配品の配送を行う運送会社であった。
同社は以前、完全日給制の給与制度を実施しており、時間外手当の未払い問題などが起こったため給与制度の改定を行い、日給制の基本給と残業代に出来高歩合給を加えて支給する方式に変更し、変更後は有給休暇時の給与計算に関する社員からの質問などはあったが、未払請求などは一切なくなり経営者もようやく頭を悩ませていた未払残業請求の問題から解放されていた。

日給制の基本給での残業代は、「時間」基準で計算、休暇取得の際は出来高歩合給も時間単位で保障する必要があるなど、やや複雑で、同社社長Bさんは総務のCさんに給与計算に関する事項を一任していた。

ある日、Cさんの個人事情と社内でのトラブルが重なり、Cさんが退職することとなり、社内は混乱していた。同社の複雑な給与制度はCさんが一手に担っていたからである。給与に関する事項は事務の女性にも関わらせたくないという事情があった。

Cさんの退職に伴い人材を募集したところ、40歳の人事経験者のDさんが入社することとなり、B社長はDさんに大きな期待を寄せていた。

入社後2週間が経過し始めた頃、Dさんは就業規則に関して試用期間の設定、休暇請求期限、休職からの復職要件など、A社が「会社を守る」という立場で制定してきた就業規則に関し疑問があるようで、度々B社長に「この条文は社員に不利ではないか」というような質問をしてきた。入社直後であるのに、仕事を覚えること以前に会社制度の批判が多いDさんに対しB社長は不安が募っていった。

そこでB社長はDさんに改めて「会社方針」「現状の環境、優先対応事項」などについて説明し、了承してもらおうと試みたが、次の日からDさんは出社しなくなってしまった。連絡を取り出社を促すよう留守電を入れたが返信はなく、給与支払い日まで猶予がなくなりB社長は困っていた。

その後Dさんから会社に対し内容証明郵便が届き、「経営方針を押し付け反論を許さない言い方など、パワハラである。社内に法令違反も多くあり、改善がない場合は法的手段を行使する」と記載されていた。

どうやらDさんは前職でも同様のトラブルを引き起こしていた人物であった。

⑵事例のポイント
運送業の給与計算を身内など限られた社員で完結したいと考える経営者は多いです。給与情報の他社員への流出などのリスクがあるためです。しかし、経営者が事務作業を行うことにも限界があるために、特定の社員のみが実務を担当し、計算の基準などがその社員以外は誰も分からなくなっていることも多いです。

2.対応策
人手不足の中で人材を募集する場合、前職の退職事由について「退職証明書」の提出を要求することは必要です。また、前職への電話なども必要に応じてした方がいいでしょう。

一見人当たりがいい好感触の方であっても、退職時など、経営者と敵対的な関係になった場合に性格が一変することもあります。SNS調査を行う専門会社があります。有償ですが、必要に応じ活用を検討してもいいと思います。