【採用・退職トラブル対応編】㊳

「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。

今回も前号に続き、「採用・退職時における留意事項」について運送業経営者が知っておくべき労働関連法の内容及び周辺知識について解説してまいります(その6)。

1.会社都合での解雇
労働基準法では労働者を解雇する場合は「30日前に予告する」か「30日分の解雇予告手当の支払」により解雇できると定められています。

しかしながら労働契約法16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められていることより、相当な事由がないと認めらないと考える必要があります。
アナウンサーという専門職において放送に影響を与えたが、「解雇無効」とされています。この事例からも解雇が認められるためには相当に高いハードルがあることが分かります。

問題のあるドライバーを「解雇したい」という相談は非常に多いですが、本判決からも分かる通り、労基法、労働契約法での「労働者保護」の考え方が強く、ほとんど認められないと考えた方が得策です。

ただし、本人が「解雇」について納得している場合はこのような「争い」にならないために30日分の予告手当の支払いにより「解雇が成立」することもあり得ます。本人が納得していかどうかがポイントです。

2.解雇に伴う金銭補償
解雇の金銭補償は「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」で議論されているとのことですが、労働審判、訴訟等の場合には「金銭仮払い仮処分」「係争機関中の給与保障」「退職する場合の解決金」等の名目で「12月~24か月分」の金銭補償が求められる可能性(長期勤務者の場合)があるので留意する必要があります。

解雇手続きは容易ですが、社員側に弁護士等の専門家がついた場合の補償額は高額になることを踏まえておく必要があります。