全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連、難波淳介中央執行委員長)は4月14日、都内ホテルで第1回「全国単組労使懇談会」を開催、運輸企業11社の各経営代表者及び運輸労連所属の各社労働組合代表等約50人が参加した。

開会にあたり、組合側代表としてあいさつした運輸労連の難波中央執行委員長は冒頭で「運輸労連55年の歴史のなかで、中央本部主催による全国単組労使による懇談会が本日記念すべき第1回として開催できること」と「春季生活闘争の取り組みで、全国単組労使の健全な労使関係のなかで真摯な協議・交渉を行って頂き、それぞれが結果を出したこと」に感謝の意を述べた。

そして「この流れが運輸労連全体の2023春闘の流れを作り出している」として「今年春闘に取り組んだ339組合うち、13日現在で230組合が解決、単純平均で4142円(対前年1895円、84.3ポイント増)、加重平均で7516円(対前年972円、14.9ポイント増)」として規模別での結果も発表。

「個社で働く仲間・組合員にとって大きな前進が図られている。改めてこの間の労使交渉に臨まれた労使双方のご対応に感謝を申し上げる」とする一方で、「私たちの荷主企業の労働組合が多く加盟するナショナルセンター連合では、平均賃金方式で集計した組合員平均を上回っている」と述べ、他産業との格差が改善すると思われたが、逆に広がりそうだとの懸念を示した。

難波中央執行委員長は23春闘を「人財確保春闘」とネーミングし、「これは労働条件の改善を図り、企業の魅力度を高め、人財確保に向けた強い意志を示していることに他ならない」とし、春闘交渉の途中で初任給引上げの発表を行う企業も出ていたことに対し「これは2024年の採用に向けて自社の優位性を新卒予定者へ伝えるメッセージ。企業間の人材確保に向けた動きは激しい」と語った。

2024年問題については「トラック運輸産業の抱える構造的な課題に対して経営トップの皆さんとの懇談の場を通じて、解決の糸口を探って参りたい。個別労使間の日頃からの懇談と同様に胸襟を開いた懇談、そして終了後の懇親の場へとつなげていければと考えている」とあいさつした。

また企業側代表としてあいさつした日本通運の近藤晃副社長は「上昇したコストを収受する運賃・料金に転嫁する、また契約書に記載のない従来の商慣行の中で行われていた積み込み作業等の付帯作業で待機時間等についても適正な料金を頂戴すべく交渉を重ねているが、すべてを転嫁できる状況にはない。しかし引き続き丁寧かつ粘り強い説明を重ね、お客様の理解を得られるように取り組んでいく」と説明。

2024年問題については「時間外労働の上限規制への適応や改善基準告示の改正等、運輸業界での働き方が大きく変わる転換期になる。企業としてはこれらに適切に対応していくことが求められるが、特に時間外労働の上限規制については、業務量が顧客の生産や販売の動向に大きく左右される我々業界にとっては経営に与える影響は極めて大きい」と話し「対応していくためには今後一層輸配送の共同化、あるいはモーダルシフトを推進すると共に、自動運転技術等が急速に発展しているAI、IoT等の先端技術の活用を見据えて、少ない労働力でも効率よく輸送する仕組みを構築することが必要。一方でこの状況は物流業界の社会的地位を改善するチャンスでもある。物流の重要性を認識していただき、顧客にとっても大きな関心事になるよう取り組んでいく必要がある」と語った。

また高止まりする作業中の死傷件数に関して「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドラインに基づく基本的安全対策の徹底を図ることで荷役作業における労働災害防止について務めていく。安全は企業存続の生命線であり、妥協が許されない経営の最重要課題であるので事故・災害のない職場を作り上げるべく鋭意取り組んでいく」と述べた。

この後、立教大学の首藤若菜教授による「2024年問題の先を見据えて」と題した講演が行われ、引き続き、懇親会も開催された。

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