居眠り運転と事故と関連の深い睡眠時無呼吸症候群(SAS)。このほど国土交通省自動車局長から「自動車事故報告書等の取扱要領」の一部改正について通達が発出され、SASが疑われる居眠り運転、漫然運転を伴う事故が発生した場合、自動車事故報告書の「推定原因」に事故の原因として疑われる疾病名を明記し報告するよう改正された。

運輸事業者を対象とした定期健康診断のフォローアップ事業のほか、SAS対策事業などを展開するヘルスケアネットワークの作本貞子副理事長は、「SASが事故の推定原因と明記されることは、事業者がSAS対策に真剣に取り組む大きな一歩になるのではないか」と話す。

運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなくなった事故については、「自動車事故報告書等の取扱要領」により報告するよう指導されているが、SASが原因と疑われる事故について、報告がされていない状況があった。

2015年から国土交通省事業用自動車健康起因事故対策協議会の委員も務める作本副理事長は、協議会内で、SASを事故報告書に明記することで対策を推進していくことの重要性について発言した。平成16年4月から、OCHISは全国でもいち早くSAS検査システムを構築・導入し、作本副理事長は安全と健康が何よりも重要と訴え続けてきたこともあり、思いは誰よりも熱い。

2003年に、新幹線のオーバーランが発生し、その後運転士がSASであることが判明したが、この一件によりSASへの注目度が一気に高まった。「病気により居眠り運転をしてしまっているのなら、治療を正しく行えば悲惨な事故は起こらないかもしれない。

そのためにも原因をはっきりと表に出すことが何よりも重要。うやむやにしていては、対策はできず事業者の意識も変わらない。運送業における脳・心臓疾患の発症が多いことが言われるようになってから全ト協による血圧計の助成がスタートし、事業者の意識も変化したように、今回の改正でもっとSAS検査を受ける事業者数が増えることを願う」

作本副理事長は今年度、SASスクリーニング検査の普及促進と、SAS対策が実効につながる運用面での解説を取り入れ、3ステップでのSAS対策セミナー(全ト協主催)をオンラインで行う。「今一度、事業者の健康意識の底上げを行っていく必要がある。今後もSAS対策と定期健康診断のフォローアップ事業で、働く人々の健康と安全をサポートしていく」と話した。

◎関連リンク→ NPO法人ヘルスケアネットワーク(OCHIS)