【質問】2024年に始まるドライバーの時間外労働上限規制に向けて、運送形態ごとに異なる課題や対策があれば教えてください。

 

「運送業」と一口に言ってもその形態は千差万別です。当然、労働時間短縮の方策についても一括りにはできず、運送形態ごとに異なる課題や対策があります。

例えば、長距離輸送と地場配送の違いは最もわかりやすいでしょう。

①長距離輸送の場合は運転時間が長く、宿泊を伴うため遠隔地で休息をとることが多い

②地場配送の場合は近距離の立ち寄り先が多いため、積み下ろし回数の増加や作業時間が長くなる傾向があり、日帰りの業務で休息は帰庫後にとる、などの違いがあります。

したがって、労働時間の短縮は両者の違いをふまえて検討する必要があります。長距離輸送の場合には高速道路やフェリーの利用、運行ルートの見直し、休憩や休息期間の適切な指示、中継輸送の検討、車両の大型化などの対策から検討します。

また、地場配送の場合は立ち寄り先や運行ルートの見直し、立ち寄り先での待機時間短縮、カゴ車の利用などによる作業時間の短縮などから検討を開始することが多いと思います。

特にスーパー、コンビニなどの店舗配送では一便ごとに店着時刻が設定されていますが、前後の準備時間などの要因で長時間労働になることがあり、配送店舗数や運行ルートの再検討が必要になった事例があります。

現金輸送や新聞輸送、郵便逓送などの運送形態でも同様の問題が見られます。また、海上コンテナ輸送や航空貨物などの運送形態は、待ち時間が不定期で予測できず、解決が困難な課題を抱えています。

この場合、例えば休憩の4原則(①次の作業時刻を指示②車両監視義務を課さない③休憩中の自由利用④駐車スペースの確保)を考慮して、休憩場所の設置や休憩可能な時間帯の設定など、手待ち時間(労働時間)から手空き時間(休憩)へシフトする余地がないかを検討することも考えられます。

また、長距離輸送のうち、木材や鉄鋼、機械など重量物輸送については車両の大型化、高速利用、荷役作業時間の短縮や作業負荷の軽減などから検討することが多いです。

なお、トレーラのヘッド交換による中継輸送は比較的検討しやすく、今後さらに増加するでしょう。2024年以降は運ぶだけの運送形態から脱して、保管拠点を自社で確保し、荷待ち時間なしで自社倉庫から出荷する形態を指向する会社も増えてくると思います。

 

コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)